子ども視点で開発された門扉が登場~伸縮ゲート レイオス
掲載日: 2025.11.26

オープン外構のトレンドの裏にあるリスクに着目
子どもの道路への飛び出しなどの事故防止には様々な視点やアプローチがある。
昨今の分譲住宅のトレンドを踏まえ、子どもにとって安全な門扉の在り方を提案した製品が「伸縮ゲート レイオス」である。
子どもが触れる可能性がある、一般製品の安全を満たす優れた作品として、子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門・優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞した。YKK AP株式会社の櫻井誠也さんはこう語る。
「YKK AP は、Architectural Productsで社会を幸せにする会社というパーパスを掲げており、このパーパスのもと、製品開発を進めています。現在、住宅では玄関と道路境界の間に仕切りやゲートを設けない、オープン外構が主流になっています。こうしたトレンドのなかで子どもの安全が確保されているのか、が開発前の課題としてありました。
一方、交通事故件数をみると子どもの不慮の事故というのがワースト1位であるという点にも着目しました。この2点の課題から新たな製品が考えられるではないか、と思い立ったのが開発に至った背景です。」

オープン外構のトレンドもあり門扉の必要性が増している
子どもの目線から製品の安全を設計
安全の視点は子どもの飛び出しによる交通事故の防止だけではない。この製品は門扉そのものにおける子どもの安全対策にも抜かりがない点が秀逸である。そのためにどのような設計を施したのだろうか。
「広い間口を物理的に仕切る伸縮ゲートは以前からありましたが、この製品は子どもの飛び出し防止のみならず、伸縮ゲートを使う際に起こりうる事故の防止も考えています。デザインのポイントは4つあります。
1点目がハンドルです。従来は下向きのハンドルでしたが、上向きハンドルにすることによって、子どもの頭や目に当たらない工夫を施しました。
これは大人にとっても、荷物を持ったりしている場合でも使いやすくなりました。2点目は脚の部分です。以前はカバーをつけておりませんでしたが、これですと子どもが脚部に乗って遊んでしまう可能性があります。
カバーをつけることで足をかけにくく、乗りにくくなり、子どもが脚部に乗って転がり落ちるといった事故を防ぐことができると考えました。」

グリップを上向きにすることで子どもの安全も使いやすさも向上

脚部にカバーをつけることでよじ登りによる事故リスクを低減
小さな子どもにとってはすべての設備、インフラも遊び道具になる。それは発育・発達の過程で重要なことである。しかしそこで事故が起こってはならない。こうした思想が開発の根底にある。
「3点目は形のディティールに関してですが、従来こうしたゲートはスクエアな形が多かったのですが、全体に丸みを帯びたデザインに仕上げています。
角を丸くすることで子どもが当たった場合でもケガをしにくいですし、シンプルな意匠で洗練された印象を目指しました。4点目は隙間のサイズの工夫です。
柱と框(かまち)の間、蝶番部分の隙間など、仮に指が挟まってもケガをしない寸法を確保しようと設計で考え、社内で検証した結果、14㎜に設定しました。これによって、ケガのリスクを減らすことにつながっています。」

各パーツの角をRにすることでぶつかった際でも安全だ

稼働部などの隙間のサイズにも配慮して事故を防ぐ
開発プロセスでは検証を繰り返した
開発に至るプロセスでは様々な検証に時間をかけたという。
「今回、子どもの安全確保、事故やケガの防止という視点で開発を進めてきましたが、他社商品と試作品を並べて、社内モニターの方に実際に使っていただき、検証をしました。
使いやすさと安全性の両面から様々な意見を集め、製品開発にフィードバックしました。今回の受賞を機に子育て世代のみならず、多くのユーザーの方に、製品の認知が高めることを期待しています。」

開発に至るまでには様々な検証が行なわれた
本作品の重要なポイントは、製品本来の機能、つまり飛び出し防止という視点に加え、製品そのものにおける安全性にも細かな配慮を施している点である。
デザイン的に成熟したと思える製品分野においても、子ども目線で見直すとさらに進化の余地があることを改めて認識できた作品と言えよう。
