【第2回】キッズデザインに取組むことはSDGsに取組むこと<講演2>

掲載日: 2022.2.4

2021年11月16日、キッズデザイン協議会では企業を対象にしたSDGs入門セミナーをオンラインで開催しました。SDGs(持続可能な開発目標)は、今や企業活動に欠かせない取組みとなっている一方で、「具体的に何から取組めばいいのか分からない」という声も聞こえてきます。セミナーではSDGsの基本やビジネスで貢献するための施策を解説し、キッズデザイン視点から取組むSDGsについて意見を交わしました。

講演2「キッズデザインに取組むことはSDGsに取組むこと」

キッズデザイン協議会理事
株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役社長
高橋義則氏

■なぜ、子どもとSDGsなのだろう

「SDGsが目標に掲げた2030年まであと9年です。子どもたちの年齢を逆算すると、2021年に8歳の子どもは18歳、高校3年生から大学生になります。5年後には22歳、社会に出ていく頃です。さらに5年後の2040年は27歳となり、社会の中枢を担う年代となります」(高橋氏)

大人からすると「2030年はまだ先の未来」と思いがちですが、もう目の前に迫っているのです。

上図は、キッズデザインのデザインミッションです。

「今いる子どもたちが持続可能な暮らしができるよう、その次の世代の子どもたちのことを考えるためのSDGsであるべきだと考えます」(高橋氏)

■キッズデザイン賞受賞作とSDGs

高橋氏はキッズデザイン賞の作品とSDGsとの接点を独自に分析しています(一部紹介)。

1.ひより保育園食育活動(ひより保育園)
【ゴール2:飢餓をゼロに】
0〜5歳までの子どもが通う保育園。自分たちの力で食べ物を選び、友達と協力しながら調理をし、保護者など大人に振る舞います。 協働する力や観察する力を養いながら、フードロス問題や社会提案性のある食育プログラムとなっています。

2.産婦人科オンライン(㈱Kids Public)
【ゴール3:すべての人に健康と福祉を】
近くにすぐ相談できる人がいない子育て中の若い親が、オンラインで相談できるサービス。平日18時以降22時までの予約制ですが、現役の産婦人科医や助産師といった専門家が対応してくれます。 子育て中の孤立化防止や子育てする人の心の問題・健康に配慮する取組みです。

3.Picot(㈱オーケージーカブト)
【ゴール3:すべての人に健康と福祉を】
子どもの体の寸法や行動特性を考慮した自転車ヘルメット。自転車ヘルメットには小さな子ども用の規格がなく、サイズの合わないヘルメットでは重篤な事故につながる恐れがありました。このヘルメットを開発した結果、安全基準に適用されたというモノづくりからスタートしたロジックモデルの好事例です。

4.子ども用ヘッドセット(エレコム㈱)
【ゴール3:すべての人に健康と福祉を】
コロナ禍でオンライン活用が増え、ヘッドフォン難聴は大きな問題です。WHOによると世界中でヘッドフォン難聴予備軍の子どもは11億人を超えるとも。子どもの頭のサイズを計測し、子どもに適正な音量となるよう設計してあり、ヘッドフォン難聴被害を防止します。

5.こどものけんちくがっこう(NPO法人こどものけんちくがっこう/鹿児島大学/㈱ベガハウス)
【ゴール8:働きがいも経済成長も】
大学と工務店の産学共同によるモノづくり体験活動。夏休みには実物大の家を作り公園に設置するなど、地域の木材を使って森林学習・建築学習を組み合わせました。総合的な学びと地域への愛着を育む社会提案性のある実践的な活動となっています。

6.捨てる化粧品を画材に変えよう!プロジェクト(プラスコスメプロジェクト)
【ゴール12:つくる責任つかう責任】
捨てられる化粧品を画材にし、絵を描くことを通じてアート教育につなげる取組み。メーカーや学校と組んで化粧品の回収システムまで構築し、日本に留まらず世界にも広がっています。

■産業界が出来ること

「誰一人取り残さない」という大きなテーマの下に、SDGsの17のゴールがあります。
上図は、キッズデザイン協議会が考えるキッズデザインとSDGsの関係性です。キッズデザインはSDGsを包摂するのです。 「最終的に未来を作り上げるのは子どもたち」と言う高橋氏は、誰一人取り残さない社会作りが出来る環境を、社会やコミュニティの基礎を、今の大人たちが作っておくことが大事だと訴えます。

「新しい街づくりや、子どもたちが創造性や感性を発揮できる環境作りをお手伝いできるのが、私たちの役割で、産業界が様々な研究機関や地域・コミュニティと連携していくことでこうした社会が実現出来るのではないでしょうか」(高橋氏)

SDGsと子どもの関係をウエディングケーキモデルで考えてみます。 子どもを取り巻く社会課題やそこに不足しているものに気付く――それをロジックモデルで探っていけば、キッズデザインの製品・サービス開発はおのずとSDGsにつながっていくのではないでしょうか。 そして、実践したものを発信することは重要です。良い製品・サービスがあっても伝わらなければ意味がありません。

「子どもたちに投資をして、子どもたちを健全に育むことが結果的に未来をつくっていく――という活動が多くの人に届き、“キッズデザインはSDGsとニアイコール”だと感じていただけるのではないかと考えています」(高橋氏)

■SDGs18番目のゴール「子どもたち」

最後に高橋氏は、キッズデザイン賞の審査委員長を務める益田文和氏の言葉を紹介しました。
『(略)国連はSDGs17の目標を設定しました。しかし、一つ抜けている背骨があります。18番目には“子どもたち”が入るんです。
次の世代のためのデザインをしていけば、全てが満たされるはずです。SDGsもデザイン。未来のための目標設定ならば、いつの時代も子どもたちの存在を忘れてはならない。キッズデザインは常に子どもの中にある未来を見ているのだから』

第3回「トークセッション」 に続きます。

    
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