第二回SDGsセミナー「キッズデザイン×法政大学SDGs+プロジェクト」講演1

掲載日: 2022.10.5

2022年8月22日、キッズデザイン協議会では企業を対象にしたSDGsセミナーを開催しました。SDGs(持続可能な開発目標)は、今や企業活動に欠かせない取組みとなっている一方で、「具体的に何から取組めばいいのか分からない」という声も聞こえてきます。セミナーではSDGsキッズデザインとの関係性を解説し、キッズデザイン視点から取組むSDGsについて意見を交わしました。

基調講演 「SDGs×キッズデザインによるサステナブル社会の実現」

法政大学
デザイン工学部教授
川久保俊 氏

■子どもは社会の宝 未来そのもの


上図はキッズデザインの3つの方向性を表したものです。

この方向性を集約しているのが、『すべての子どもは社会の宝であり、未来そのものです』から始まる「キッズデザイン宣言」だと川久保氏は言います。SDGsも『次世代へのバトンパス』という点に力点が置かれており、子どもたちを大切に想う点で軌を一にしています」


キッズデザインの輪(上図)は、発生した事故を過去のものとせずに、事故を起こさない次のデザインに活かしていく仕組みを表しています。事故の原因究明・検証データや子どもの行動計測等のデータを関係者間で情報共有し、事故を未然に防ぐ製品・サービスを持続的に創出していくデータドリブン型のデザインアプローチはこれから益々重要になってくると川久保氏は指摘します。

■次世代へのバトンパス




上図のアイコンは、様々なところで多くの人が目にしていることでしょう。
しかし、SDGsを深く理解している人は多くはなく、「SDGsの存在は認知しているが、実はその中身や意義はよくわからない」という人が多いとも言われています。
川久保氏は、「17のゴールは世界共通言語です。英語を話すために英単語を覚える必要があるように、国内外の潮流を理解するためにもこの17個のゴールの中身は最低限覚えておく必要がある」と話します。

Sustainable Development(持続可能な開発)という考え方は1970年代にはすでにあり、1987年に明文化されました。
「今、豊かに暮らしている自分たちの世代さえ良ければいいという利己的な考え方から脱却し、我々の子どもや孫、さらにその次の世代につけを回さずにいい形でバトンパスしていきましょう、という利他的な考え方です」

SDGsを理解するには、どうしたらいいでしょうか。
「2030アジェンダを読んでほしい」と川久保氏は話します。SDGsの本質が書いてあると。
(和文仮訳:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf)



「地球と人類が存続できるかどうかは、今を生きる我々の手の中にあります。特に若い人たちを応援していきましょう、ということが書いてあります。これもキッズデザインとの共通点だと思っています」

■ゴールを見ていても何も始まらない




SDGsは17のゴールと、169のターゲット、約230の指標(インディケーター)から成り立っています。ゴールを達成するためにはアクションが必要で、何をすべきかが2層目のターゲットから見えてきます。そして、インディケーターは、その取組みの進捗状況を確認、検証するための計測尺度、評価ツールです」

「キッズデザインを検討する際にもゴールだけでなく、ターゲットやインディケーターまで目を通しておくといいと思います」

川久保研究室のホームページ内「SDGsとは」(https://kawakubo-lab.ws.hosei.ac.jp/sdgs/info)ではSDGsのゴール、ターゲット、インディケーターのキーワード検索が可能。

■歴史的な転換点


国連でSDGsを含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたその3カ月後の2015年12月には「パリ協定」も採択されました。 「持続可能な開発という考え方は古くから存在していましたが、17のゴールに向かって頑張ろうと193の国連加盟国が1カ国も離脱せず合意したというのは、歴史的快挙です」と言う。「2015年は、メモリアルイヤーとして認識されるようになるはずです。100年後、200年後に人類が過去を振り返った時に、2015年が転換点だったとみるでしょう。私たちは、その歴史的な転換点に生きているのです」と世界がいかに画期的な決断を下したかを説明してくれました。

■SDGs×子ども



SDGsスタディパネルはSDGsに関する理解を促進し、 行動を誘発する学習ツールとして作成したものです。表面には見慣れたアイコンを全面に貼り付けています。、裏面には17の各ゴールに関するキーワードの解説文章を掲載すると共に、界の状況、日本国内の状況、講じるべきローカルアクションの例を記載しています。
「17のゴールに関連した情報を、グローバル、ナショナル、ローカルという順にスケールダウンしながら紹介することでSDGsをより身近に感じていただく工夫を凝らしました。講義の際に講師がSDGsの紹介に使ったり、学生や児童が裏面を見ながらグループワークをする際に使ったりしたり、学習後の成果発表会や記念撮影など、さまざまな使い方ができます」


ローカルSDGsとして川久保研究室が取組む「SDGsを原動力としたまちづくり」では、「All for the Next」(すべては次の世代のために)を理念に掲げる熊本県小国町の総合計画の策定をサポートしました。主役は未来を担う子どもたち。先代からの伝統や知見を次世代へ引き継ぐために、世代や地域の垣根を超えた交流を重視し、子どもや保護者へのアンケートを実施するなど町民の声を聞いたと言います。

「10年後、20年後、今の子どもたちが大人になった時にも良い町であってほしいという思いを込めて総合計画を策定しました。まちづくりに関心を持ってもらい、地域をより良くしていこうと子どもたちを巻き込んだ取組みです」


講演2「キッズデザイン受賞作品とSDGsとの関連性分析」に続きます。
    
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