第二回SDGsセミナー「キッズデザイン×法政大学SDGs+プロジェクト」講演3

掲載日: 2022.10.5

2022年8月22日、キッズデザイン協議会では企業を対象にしたSDGsセミナーを開催しました。SDGs(持続可能な開発目標)は、今や企業活動に欠かせない取組みとなっている一方で、「具体的に何から取組めばいいのか分からない」という声も聞こえてきます。セミナーではSDGsキッズデザインとの関係性を解説し、キッズデザイン視点から取組むSDGsについて意見を交わしました。

ディスカッション「キッズデザイン視点から考えるSDGsについて」

(小谷) 川久保先生にお聞きします。ローカルSDGsを進めるきっかけや、その地域の方々と一緒に取組むための方法やコツがあれば教えてください。

(川久保) 少子高齢化は、全国共通の課題と言ってもいいでしょう。一方で、地域によって抱える課題は異なり、顕在化していないケースも多くあります。この時に有効なのが共通言語となるSDGsです。
地域の長所や短所(課題点)を可視化できる「ローカルSDGsプラットフォーム」というサイトを運用していますが、「あなたのまちではSDGsの〇において、他の地域よりも課題が多いようです」といったふうに今後、顕在化すると思われる課題を提示し、その解決に向けて一緒に取組もうとアプローチしています。
まちづくりに取組む際は、子どもの存在が非常に重要です。ある町でSDGsを知っていただこうと思って町内の数カ所で大人たちを対象とした勉強会を開いたことがあったのですが、認知の広がり方は限定的でした。そこで、アプローチ方法を変えて小中学校で学生達を対象としたSDGsの勉強会を開きました。その後その町には一気にSDGsの認知が広がりました。
子どもたちが家で、今日はこんなことを学んだと、ご家族にSDGsの概要やその重要性を伝えてくれたのです。

(小谷) 川久保先生には15年分のキッズデザイン賞をAIで分析したものをご用意いただきました。

(川久保) 文章の中身を理解してその記述内容がどのSDGsのゴールに関連があるか自動判別するAIを用いて分析したものです。AIで2021年度のキッズデザイン賞受賞作品データを分析し、レーダーチャートを作ってみました。その結果は、河崎さんの講演でご紹介されていた「スズメの滑降型」に類似しており、面白い結果でした。



下図は2007年度の第1回から2021年度の第15回まで分析し、前期(1〜5回)、中期(6〜10回)、後期(11〜15回)に分けてSDGsとの関連度を棒グラフにしたものです。



受賞者が意図しているか不明ですが、後期になるほどSDGsとの関連度が多くのゴールで強まっているのがわかります。キッズデザイン応募作品がより社会問題解決を意識したものになっていると読む解くことができるかもしれません。非常に面白い結果です。

(河﨑) 社会の動きを捉えた非常に興味深い分析ですね。私たちが行った分析は、文章にない、開発者の思いを読み取るものでした。

(川久保) AIによる分析結果と人による分析結果の両方を見ることは重要です。AIは時々人が気付いていない傾向をデータの中から見出して教えてくれます。開発者にフィードバックすれば新たな動きを生むかもしれません。ただし、AIにはまだ稚拙なところも多く、見当違いな結果を示すこともありますので結果解釈には注意を要します。

(小谷) 企業が川久保先生のローカルSDGsとコラボレーションできそうなことはあるでしょうか。

(河﨑) 企業と大学のパートナーシップは、win-winの関係だと思います。企業の研究力や財力と、地域に溶け込みやすい大学、学生の特性を活かす。17番のパートナーシップが一番力を発揮できるのは企業×大学ではないでしょうか。

(川久保) 私もそう思います。大学(の研究室)は毎年新しい学生が入ってきて新陳代謝が早いのが特徴です。学生達が次々と新しいアイディアを創出してくれます。一方でそのアイディアを社会実装する力は企業ほど持ちあわせていません。0を1にするのは大学、1を100にするのは企業というように、両者が協働してシームレスにつながるのが理想的です。

(小谷) 会場にいる学生の皆さん、質問はありますか。

(学生) 数年前にバリアフリーデザインが流行っていましたが、バリアフリーデザインとの違いを教えてください。

(河﨑) バリアフリーは障害を取り除く意味ですが、誰にも使いやすいとなったものがユニバーサルデザイン。包括されたイメージです。子どもやシニアの安全、あるいは障害状態に対するデザインの研究は継続しています。SDGsとは別に、そのような状態に対応できる設計、まちづくりは進んでいます。

(川久保) ユニバーサルデザインとかインクルーシブルデザインとかたくさんあってわかりにくいかもしれませんが、要はどこに重きを置くかだと思います。キッズデザインは、子どもとそれを支える人、さらに次世代に重きを置いています。時間軸を意識しているため、SDGsとの親和性が非常に高いのではないでしょうか。

(河﨑) バリアフリーは今をなんとかするためのデザインが多いですね。

(小谷) 今後、SDGsのどのゴールに力を入れていきたいか、それはどのような視点からかお聞かせください。

(川久保) 建築とまちづくりを専門にしているため、11番(まちづくり)、12番(つくる責任つかう責任)を中心に、4番(教育)、9番(研究開発)、17番(パートナーシップ)などに取組みたいと思っています。重視したいのは「思いやり」の気持ちです。使う人のことを考えたデザインが浸透すればは、誰もが使いやすい製品やサービスに溢れ、住みやすい社会になります。SDGs×キッズデザインにより、真のサステナブル社会が実現されることを期待します。

(河﨑) 「人に優しくしよう」というキーワードをお伝えしたいと思います。また、自分的には8番。企業にとって8番、9番は非常に大事です。コロナ禍で働き方が大きく変化しました。働き方を変えながら、働く人も幸せになる。人の幸せや社会の幸せはその先にあるのではないでしょうか。
    
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