子ども目線で街に隠れた「子どもに優しい」を探し、伝えたい~ここほれワンワン!デザインがザクザク!キッズプロジェクト
掲載日: 2025.11.7

子どもに優しい街の魅力を子どもが掘り起こす活動
子どもたち自身が地域の企業や団体に”おじゃま”し、子どもの感覚で「やさしさ」や「わくわく」を見つけ出す体験をデザインする。
そこには子どもたち自身が街の魅力や地元企業の取組を調べて、それを伝える様々な工夫があった。オリジナルのキッズデザインマップは街の魅力で溢れた、楽しさいっぱいの作品である。

街に隠れたキッズデザインを探してみよう
この活動を実践しているのが、最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞した「ここほれワンワン!デザインがザクザク!キッズプロジェクト」である。
この活動に参加した、宮崎大学教育学部附属小学校 6年の吉川心陽さんは体験をこう語る。
「最近、宮崎市でも統廃合で学校がなくなるというニュースを見ました。もし自分の学校だったらと単純に悲しかったし、友達は多い方がいいので、友達が減らないためには、宮崎市がどこよりも子どもに優しい街であることを証明して、みんなに知ってもらうのがいいんじゃないかなと考えました。子どもに優しければシニアにも優しい街だし、そんな街は絶対に住みやすい。
そこで私たちは色々な会社に行って、キッズデザインを探して見つけてきました。んまつーポスや宮崎市役所の方々に手伝ってもらい、これまで 15 社の企業で『ここほれワンワン!』の活動をしました。」

ここほれワンワンの活動の流れ
子ども目線が地域や企業を動かすことも
訪問を続けていくうちに思わぬ発見につながることもある。心陽さんはこう話してくれた。
「まず、ちゃんと会社のことを調べて、それから会社に行って、調べ学習だけだと分からなかったことを担当の方に質問しました。
見学して、説明を聞いて、実際に触ってみて気づいたことをメモしたら、劇場に戻ってみんなと共有しました。
ある会社では、最初に『ここほれワンワン!』をした時にはなかなかキッズデザインを見つけられませんでした。でも、活動をまとめたフォトブックを届けた時にちょっとびっくりしたことがありました。宮崎市の暑熱避難施設に登録して、子供からお年寄りまで立ち寄れる場所になっていました。また、涼むだけじゃ楽しくないからとかき氷機も設置し、無料でたくさんのシロップを選べるかき氷機を提供したそうです。私たちは会社に変化が生まれたことを聞いて嬉しかったです。
『ここほれワンワン!』が会社をちょっと動かせたのかもしれないと感じました。」

子ども目線で見ると企業の取組も変わっていく
子どもの声が地域を動かす原動力となるようにデザインされているこの活動のなかでは大人は伴走者に過ぎない。参加した子どもたちからは、こんな感想が聞こえてくる。
「インターネットで調べてわからなかったことも実際に行ってみとかって嬉しかった。」
「やっていくうちに、日常的にすごく子どもがいそうだなとか、子どもにめっちゃ優しいなとか気になって、最初から比べると見る目が結構変わったと感じました。」
「参加するまではキッズデザインという言葉を聞いたことがなかったけど、参加してみてどんなことをキッズデザインっていうのかとか、視野を広げていくたびに宮崎市にはいろんなキッズデザインがあって、それをやっている企業もたくさんあるんだなと思いました。」
「考えてない時はあまり見つけられないけど、キッズデザインを探そうと思って歩くと見つけられる。今まで何気なく見ていたものもキッズデザインなんだって思って、これからもっと見つけていこうと思いました。」
人の優しさもキッズデザインである
『ここほれワンワン!』で地元の企業や街を探索していくうちに、子どものなかに新たな気づきが芽生えてくる。このプロジェクトを手掛けてきた、クリエイティブ集団「んまつーポス」代表・振付家ダンサーの豊福彬文さんはこう語ってくれた。
「企業訪問でなかなかキッズデザインって見つけられないときに、対応してくれた人が優しかったから、ということでその人がキッズデザイン、というケースもありました。小学生の時に活動に参加して、中学生になってボランティアとして参加する子もいます。」
子どもたちに具体的なエピソードも聞いてみた。
「小さな子どもだとスイッチでつける電気だったら届かないこともあると思うから、センサーでつく電気だったら感知してくれて電気がついてくれるから。お年寄りから子どもまで使いやすいデザインだなと思いました。」「足が速くなる食品みたいなのありますか?みたいなことを聞いた時に、一緒に考えてくれたりとかしたことが最高のキッズデザインだなと思いました。」
豊福さんの話にもあるように、この活動にはボランティアとして関わってくれた中学生、高校生も大勢いる。彼らの声を聞いた。
「子どもたちが主体になって動くプロジェクトなので、そこもキッズデザインか、と色々なキッズデザインが見えて、非常に面白かった。」
「小学生の時は大まかなところを見て、こういうデザインがあるんだなぁ、と思う感じですけど、中学生になったらその中でも細かいところを見るのかなと思います。」
「小学生だと楽しそうとか、五感で判断すると思います。中学生は受験とかいろいろ関わってくるから、社会的なつながりとか、そういう発想がでてくるじゃないかなと思います。」
「いろんな企業を見ることで、この会社入ってみたいなというのも増えると思うし。企業のことを知れるからいいんじゃないかなと思います。」
多くの人に愛される子どもに優しい街になってほしい
子どもの未来はこの街の未来でもある。活動を通じて、地元・宮崎のことを改めて知るきっかけにもなり、それを支える人々の思いにも触れてきた。それは確実に子どもたちの「社会を見る眼」を変えたに違いない。掘り出したキッズデザインたちはマップにして、友達、大人、地域と共有される。
「子どもに優しいことをやっているいろんな会社があるし、宮崎のことをめちゃくちゃ思ってるなって発見があったりしてよかったです。」
「仕事中にも説明をしてくださって、優しい人がいっぱいだなと思いました。市役所では交代で話をいっぱいしてくれて、宮崎のことをたくさん知ることができました。」

マップの制作風景
『ここほれワンワン!』の成果は参加した子どもが語ってくれたこの言葉に集約されているように感じた。
「今までは気にしてなかった大人目線じゃなくて、子ども目線からの子どもに優しいを見つけることができたから、もっとたくさんの人に子どもに優しいを知ってもらいたいです。宮崎以外の県でも海外からもたくさんの人が来てくれるようになるといいなと思っています。」
