歴史ある街の子どもたちの感性を育む居場所~レイモンド斑鳩こども園
掲載日: 2025.11.28

歴史的建造物とともにあるこども園
ホールに並ぶ列柱の間を子どもたちが遊びまわり、回廊を通じて様々な居場所を移動する、そんな光景が日常的にみられるこども園が、古都・奈良にある。
そんな空間のすばらしさが高く評価され、「レイモンド斑鳩こども園」は子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門・優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞した。株式会社キノアーキテクツの木下昌大さんはこう言う。
「奈良県斑鳩町は世界最古の法隆寺のある街ですので、最初に頭に思い浮かんだのは法隆寺でした。法隆寺は五重塔と本堂がありますが、周囲を取り囲んでいる回廊がとても印象的です。この回廊にある列柱を保育園の中に作れないかと思って計画しました。この保育園の敷地は法隆寺から南西2kmぐらいの所にあり、大和川が南にあって、東側には田んぼや梨園がある風靡なところです。」

子どもたちの感性を育てる空間の様々な工夫が評価された
子どものスケールで空間の楽しさを増幅する
本建築で高く評価を受けた点が子どもの動線の作り方である。機能的かつ子どもが自由に行き来できて、好きな場所を選べるような工夫がある。
「小学校と学童施設の隣に幼稚園があったのですが、これを建て替えて新たに子ども園にする計画でした。
園庭は校庭と連続するような形で設けています。
内部は中央に多目的ホールを置き、周囲に職員室、調理室、0歳・1歳の保育室、2・3・4・5歳の保育室が取り囲む構成になっています。
中央のホール内の広場には屋根がかかっており、全天候型で遊べるようになっています。校庭と一緒になっている場所は外の広場で、内の回廊と外の回廊が取り巻くような形になっています。」

園庭と外の回廊。建物をぐるりと回遊する子どもたちのお気に入りの場所
特に目を引くのが、ホールにきれいに並ぶ列柱である。子どもたちの視線からはまるで森のなかを巡っているような感覚になりそうな印象だ。
「列柱を使って子供たちの作品が展示されていたりとか、傘が反対にぶら下げられていたりとか、ホールは色々な使い方ができるようになっています。
法隆寺からヒントを得た列柱が子どもたちの多様なアクティビティのきっかけになっています。また、大きな広場に対して、列柱が1.5メートルというピッチであることで、家に近いようなスケール感となり親密感のある空間が創り出せたかと思っています。
外部にも回廊が巡っており、子どもたちが自分たちの部屋から隣の部屋に回廊を通って行き来したり、外の園庭で水遊びする時の日陰が回廊で作られています。」

列柱が子どもたちの多様な活動を促しながら、親密でのびやかな空間をつくり出している
地元産の木材を使って、地域にも思いを
たくさんの列柱のなかには、数本、枝があったり、表面がすべすべの柱があったりと、子どもたちの気づきの仕掛けが施されている。その狙いを木下さんはこう語ってくれた。
「ここで使われている木材は奈良県で長く林業をされている森庄銘木産業さんにご協力いただいて、地場産材を使いました。
通常、建築物を作る際には製材された一般流通材を使うことがほとんどですが、子どもたちに何気なく見ている柱の木が、山林から来ているということが少しでもわかるといいな、と思い、林業家さんに協力いただいて、枝付きの柱や磨き丸太を列柱の中に交ぜて、子どもたちが自然の木の存在につながるような空間を作りました。
実際に、地元の木々に囲まれてお昼を食べている様子がとても良い風景でした。」

地元産材を使って、地域の森林に思いをはせる
こうした空間づくりは園のなかで留まるのではなく、地域にとっても意味があるという。
「ドローンで上空から撮った写真でわかりますが、奈良県の自然が多く残っている環境に建築があり、外側に回廊を設けることで、閉じたこども園ではなく、街に開いたこども園ができました。
縁側での子どもたちの賑やかな感じが街の中に広がっていけばいいなと思って設計しました。」
園のなかでの子どもたちの営みが街へ染み出していく。それによってまた地域にも元気を与えてくれる。歴史的な地域とともにある園で育った子どもたちが、地域への愛着を深めてくれることを期待している。

奈良の豊かな自然と歴史ある街並みに開かれたこども園
