子どもによる、子どものための本物のビジネスを知る場~キッズフリマ
掲載日: 2024.11.27
子どもだけの世界「キッズフリマ」で本物のお金を使った売買体験
子どもたちがお店を出して、お客さんも子どもだけ。賑わうこのマーケットは子どもだけの世界ですが、本物のお金を使って売り買いが行なわれています。
第18回キッズデザイン賞の子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門で優秀賞(消費者担当大臣賞)を受賞した「キッズフリマ」の様子です。企画・運営に携わる特定非営利活動法人キッズフリマの赤池慶彦さんはこう語ってくれました。
「キッズフリマは、“売るのも買うのも子どもだけ”ということで、出店も買い物も小学生以下の子どもだけで行なうイベントです。本物のお金を使いながら、自由に売り買いをするフリーマーケットです。出店できるのは小学校3年生から6年生まで、買い物は小学生以下なら何歳でも参加できます。子どもたちはコミュニケーションを取りながら、売る・買うに挑戦することによって、自分の目で見て考えた経験を実生活に生かすことができます。」
子どもによる、子どものためのフリーマーケット。すべてを子どもだけで行なう
金融教育が遅れる日本、その課題と背景
日本の金融教育は海外に比べて遅れが指摘されていると言います。赤池さんはグローバル化する経済・社会の中でそこに問題意識を持っていました。
「金融リテラシーの低さは国際的には際立っており、日本ではお金の話を人前でするのは、品のないこと・はしたないことのように見なされ、長らくタブーとされている傾向がありました。金融広報中央委員会の実施したアンケートによると、金融教育を学校などで受けたことがある人の割合はアメリカでは20%であるのに対して、日本ではわずか7%。1割にも達していません。また子どもがいつ頃から金融教育を受けるのがよいか、という質問に対しては、小学校入学前が9.5%、小学生が46%と、親の半数以上が小学校卒業する前までにはお金の教育を受け始めてほしいと考えています。」
社会では子どもの金融教育に対する関心が高まっていました。一方で、昨今加速するキャッシュレス化の普及によって、子どもが現金のやり取りを目にする機会がだいぶ減り、金銭感覚を養うことが以前より難しくなっていることも課題と感じていたそうです。
「このことは子どもたちにとって将来の経済活動に必要な基礎力が不足するリスクがあります。だからこそ、子どものうちからお金の大切さを実感させ、お金の価値や使い方を理解させる教育はとても重要だと考えています。私たちは子どもたちに安全に商売を体験できる場を提供し、将来に役立つスキルを楽しく学んでもらうためにキッズフリマの活動を開始しました。」
子どもだけでモノを売り買いし、お金を扱うことを学んでいく。そんな環境を作り出したいと考え、キッズフリマは生まれました。そのために、様々な工夫が取り入れられています。
「保護者は専用のスペースから見守りが可能になっており、子どもの成長の瞬間をともに共感することができます。大人が先回りして声がけし失敗を防いでしまうと、学ぶ機会を奪ってしまいます。大人が介入しないようにエリアを仕切り、成長を見守りラインという形で子どもだけの空間を作りました。
また、出店する子どもたちには収支計算シートを配布して、売上、経費、利益を自分たちで計算してもらいます。経済やビジネスを学ぶうえで収支を考えることは重要です。」
大人は介入できないエリア、子どもたちが実際のお金を使うことで失敗もして成長する
収支計算シートを使って、売り上げや利益を管理するという本格的な内容
キッズフリマを通じて、子どもたちに何を伝えたいか、それはお金の使い方だけではありません。
自分には不要と思えるモノも誰かには価値がある
ビジネスに必要なコミュニケーション力も育む
将来の消費者となる子どもたちへの良い影響
「キッズフリマでは、大きくわけて3つのことを身につけることができます。
1つ目はお金のリテラシー、本物のお金を使うことで商売の面白さを体験して、お金に関する知識を身につけられます。
2つ目はリユースの意識です。自分にとって不要なものが誰かの大切なものになるということを実際に体験して、モノを大切に扱ったり積極的にリユースしたりする姿勢が身につきます。
3つ目はコミュニケーション能力です。接客や、金額交渉などを通じて見る、聞く、話すなどの能力を高められます。」
2006年から全国で開催しているキッズフリマは累計で1,100回を超えて、これまでの出店数は4万人、来場者数は25万人を超えているそうです。保護者の方へのアンケートで参加した子どもがその日から急にお金にシビアになったり、お小遣い帳をつけ始めたりと参加したことの影響力を感じられるようです。
「ビジネスに関わる機会は、金銭管理や交渉力、問題解決能力、責任感などを培う重要な経験になります。生きていくうえで必要なお金の知識を子どものときから楽しく学ぶことでその後の人生にも役立ててほしいと思っております。キッズフリマでは、現金という見えるお金を使って、その理解を通じてお金に対して前向きな姿勢を身につけることができます。そのため、子どもたちに主体的に活動してもらえるように子どもだけというルールを作りました。体験から学びを得るには、自分自身で考えて行動することが大切だと我々は考えています。」
本賞は健全な消費者の育成に寄与する作品に与えられる賞です。その点においても、実際の売り買いを通じて、モノの価値を知り、経済の仕組みを知ることが、将来の消費者としての子どもたちに良い影響を与えてくれるでしょう。
より多くの学びの機会を提供するために、開催回数を増やしたり、地域を拡大して、もっと多くの子どもたちが参加できるような環境を作っていきたい、と赤池さんは話してくださいました。