五感を使って新たな体験を~『微妙な違いを視覚や触覚で見抜く「感覚ゲーム」』

掲載日: 2024.11.25

五感を使って新たな体験を~『微妙な違いを視覚や触覚で見抜く「感覚ゲーム」』

「ちょっとずつ違う」感覚ゲームが生まれた背景

厚みや色味、模様の線の間隔が少しずつ違う、 不思議なカードを使うゲーム。実際に触ってみると、すぐにはわかりません。何度も試してみると、はっとする驚きがあります。この感覚ゲームを開発した、「ちょっとずつ違う」代表の鈴⽊圭⼀さんはこう話してくれました。
「まず、子どもも親も一緒に楽しめる感覚のゲームが欲しいと考えました。ポイントは2つ。まず、感覚教育に役立つゲームであること。さらに、子どもが何度もやりたくなるものであることです。そのためにはゲーム性があること、親も真剣に楽しめることが必要と考えました。既存のゲームの多くは記憶と知識と運に頼っていたと思います。
例えば、記憶のゲームの代表例である神経衰弱は人によって得意・不得意があります。これとは違うゲームにしたいと思いました。
2つ目は、自分自身の感覚で当てる遊びです。私は子どもの頃、モノの重さを測る前に当てたり、部屋の温度を当てたりするクイズを家族や友達としていました。学生の頃は建築を専攻していましたが、建築空間のサイズやテーブルや椅子の大きさなどを目測で当てる訓練もしました。
大人になっても、紙の厚みを推測するクイズをしたり、ずっと続けていたこうした遊びは全世代で楽しめるゲームになる可能性があると考えたのです。」

五感を使って新たな体験を~『微妙な違いを視覚や触覚で見抜く「感覚ゲーム」』

触覚を頼りに、厚みや大きさ、視覚を頼りに色や線の太さを当てるカードゲーム

感覚ゲームの概要と遊び方

感覚ゲームの概要はこのようなものです。
「指感覚」は、厚みを見抜くゲーム。紙の厚みが9段階あり、裏には数字が書かれています。遊び方のひとつとして、触って当てる神経衰弱ができます。
2枚同じ厚みを手探りで探してめくる、記憶力に頼らない神経衰弱です。
「1ミリ感覚」は、6.1cmから9.9cmまで1mmきざみで、ちょっとずつ違う大きさのカード39枚を使い遊ぶカードゲームです。数字を伏せて、目測で狙った大きさのカードを選びます。「いろ感覚」は少しずつ違う色のカードから得点カードを色の感覚で競うゲームです。緑から赤まで少しずつ色が違う41枚のカードを使い、視覚を使って得点を競います。最後は「模様当て感覚」です。裏面の模様が少しずつ違うトランプで、エースからキングに向かってだんだん線の間隔が狭まっています。
カード間に間隔で把握できる違いがちょっとずつあり、裏面の数字を推測して当てるヒント付きのトランプです。

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    9段階の厚みを持つカード

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    1ミリ刻みで大きさが違う39枚のカード

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    赤から緑まで少しずつ色の違う41枚のカード

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    線の間隔が少しずつ異なるカード

ごく小さな違いを見つけることを大切にした、感覚を鍛えるカードゲームはユニークな視点を持っていることがわかります。開発の工夫はどのようなことだったのでしょうか。
「複数の要素を盛り込まずに単一の違いを見抜くゲームとしました。
例えば色なら色のみの違いにする。また、大人も楽しめる難易度に設定しています。簡単ではないため、感覚+運の要素の比重が高まり、何度も遊びたくなります。易しくしたい場合は数字だけでも使えます。
また、日本語を読めなくても遊べるように、カードに複雑な情報を与えず、基本は数字のみのカードにしました。」

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    子ども自身の工夫で新たなゲームも生まれる

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    感覚を研ぎ澄ますと周囲の環境を見る目も変わる

感覚ゲームで子どもたちに習得して欲しい3つのこと

感覚ゲームで子どもたちにどのようなことを習得して欲しいと考えているのでしょうか。
「子どもに役立つことは3つあると考えています。1つ目は、よく見る・感じることが勝利や正解につながるため、注意深く見る・感じることを意識するきっかけになります。そこから当たったという成功体験が積み重なっていきます。
2つ目は、個々の当てたり外れたりに対して、周りは一緒に一喜一憂するので、人の気持ちを共感する体験につながることです。
3つ目は構造がシンプルなゲームなので、工夫して自分で遊び方を考えるきっかけになることです。印象に残っている遊び方があります。色の似たカード2枚を持ってどっちが濃い?のクイズをする遊び方です。その時の子どもは1枚の角度を少しだけ下に向けて、暗く黒っぽくなるように工夫して惑わす遊び方をしていました。とてもクリエイティブな遊び方だなと思って見ていました。
また、子どもが別のゲームを考案した例もあります。片面にガムテープや布テープなど異なるテープを貼り、それを裏返して触って、どのテープかを見抜くゲームです。これは4歳児が考えました。工夫して遊ぶことは創造性そのものだと思います。」
五感を使うとよく言われますが、確かにいま遊びの方法は、記憶と運のみに偏りがちになっているのかもしれません。感覚ゲームは触ったり、じっくり見たりといった感覚を鍛えてくれる貴重なゲームと言えるでしょう。

    
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