鼻と耳は耳管という管でつながっており、ウイルスや細菌を含んだ鼻水が赤ちゃんの耳管へ流れ込むと炎症を起こし中耳炎になってしまうことがあるなど、注意が必要です。赤ちゃんの鼻水をとってあげたい、と思った時に鼻吸い器は便利ですが、最近は様々なタイプのものがあり、手動式、電動式（ハンディ型や据え置き型）など選択肢も増えています。
「手動鼻吸い器 SHUPOT-pump」は第18回キッズデザイン賞の子どもたちを産み育てやすいデザイン部門で優秀賞（こども政策担当大臣賞）を受賞しました。開発元のピジョン株式会社 開発本部設計開発部設計開発グループの林浩大さんにお話を伺いました。
「新生児期の赤ちゃんは鼻の呼吸がメインのため、鼻が詰まると苦しくなり、母乳やミルクの飲みが悪くなってしまいます。母乳やミルクは赤ちゃんの健やかな成長に直結するため、鼻水吸引、つまり鼻水のケアが重要となってきます。
弊社はこの鼻水のケアをサポートしたいという思いがあり、各種の鼻吸い器の開発をしています。」

片手で使え、いつでも手軽に鼻水吸引ができるように細部にこだわりの工夫が

従来の鼻吸い器の課題として、お手入れが大変なこと、片手で操作ができないこと、持ち運びがしにくいこと、吸引力が弱いことなどが挙がっていたそうです。そこで開発された製品が今回受賞の「手動鼻吸い器SHUPOT-pump」でした。
「さっと片手で使用できて、赤ちゃんを優しく支えながら、しっかりと吸引できる手動タイプの鼻吸い器です。製品の構成についてはフィット鼻ノズルや透明部品のアダプター、内部部品のシリコーン弁、吸引力を発生させる心臓部のシリコーンポンプ、収納時に役に立つフードとなっており、それぞれにたくさんこだわりを詰め込んでいます。」
丸みを帯びたグレーを基調としたシンプルな外観が印象的で、いわゆる赤ちゃん用のグッズとは一線を画するデザインです。開発に込めたこだわりをお聞きしました。
「１つ目がまず安全性への配慮です。イヤイヤと動き回る赤ちゃんを優しく支えることができるように、片手で使用できる点にこだわりました。また鼻に当たるフィット鼻ノズルは鼻の奥までノズルが入り込まない形状で、柔らかい素材で鼻腔内を傷つけることがないように設計しました。
また万が一、鼻血が出てもすぐに気づけるように鼻水をためる部分には透明の素材を使っています。」

さらに、製品のパーツ構成にも配慮があります。 「こだわりの２つ目が洗浄性や組み立て性です。鼻水はウイルスの塊で、機器も衛生的に使用することが大事です。
この製品は全ての部品が丸ごと洗浄可能で、吸引した鼻水を洗い流しやすいよう細かな隙間を可能な限り排除した設計としました。また部品数を６点と最小限にして、簡単に組み立てられるように設計をしました。」

「こだわりの３つ目がシリコーンポンプです。鼻水をしっかりと吸引できるように、吸引力にこだわってシリコーンポンプの大きさや肉厚、硬度などを調整して設計をしています。
ポンプを持つ部分を多角形にデザインすることで滑らずに押しやすい形状としました。」

シンプルなデザインは使い勝手や衛生面のほか、家庭内の空間とマッチする点も考慮した結果だそうです。
「この鼻吸い器は、気づいた時にさっと吸引できる製品をコンセプトに開発をしました。そのためリビングなど、すぐに使えるような場所に置いておき、使いたいときにすぐ使える、部屋に馴染むデザインとしました。」
また、開発にあたっては、専門家の意見やモニターによる検証を繰り返したそうです。
「木村小児科クリニックの木村康子先生に監修をいただき、安全面、吸引時の操作性等についてご意見をいただきました。また、実際にクリニックでモニターによる検証もさせていただき、その意見も反映しています。重視したポイントの１つが吸引性能や操作性です。
実際にご両親や先生に使用していただき、鼻水がきちんと吸えているか、鼻水吸引はどのような方法がよいか、安全性に問題はないか等について、ご意見をいただき何度も改良を重ねました。」

開発には小児科医の意見やモニター結果、開発検証をもとに継続的な改良を実施

家庭で鼻水吸引をする時のコツや姿勢などについては、取扱説明書や動画サイトで情報配信をしています。
まだ言葉で表現できない赤ちゃんが、健康に快適に過ごし、ミルクを無理なく飲めるように、鼻水吸引を安心してできるような配慮があります。林さんは最後にこう話してくださいました。
「手動鼻吸い器SHUPOT-pumpは、モニターを通じて赤ちゃんとママ・パパを見つめてきたからこその気づきや発見によって生まれた製品です。これからも赤ちゃんやママ・パパに寄り添い続けた製品開発を行い、この世界をもっと赤ちゃんに優しい場所にしたいと思います。」