【第3回】企業のためのSDGs入門<トークセッション>
掲載日: 2022.2.10
2021年11月16日、キッズデザイン協議会では企業を対象にしたSDGs入門セミナーをオンラインで開催しました。SDGs(持続可能な開発目標)は、今や企業活動に欠かせない取組みとなっている一方で、「具体的に何から取組めばいいのか分からない」という声も聞こえてきます。セミナーではSDGsの基本やビジネスで貢献するための施策を解説し、キッズデザイン視点から取組むSDGsについて意見を交わしました。
登壇者によるトークセッション
■SDGs×KDSの社内外の周知
(小谷氏)SDGsに取組む中で、社内外への周知で担当者の思い通りにならないことも多いと思います。
(村上氏)社内に対しては、部署横断のプロジェクトチームを立ち上げるのは非常に有効です。参加を募ると、年齢・性別を問わず集まるという話をよく耳にします。
一方で社外に関しては、いまや生活者の約7割がSDGsを認知しているとも言われ、確実に間口は広がっています。興味がある人に面白い情報があるかどうかがポイントではないでしょうか。
(高橋氏) 安心・安全のモノづくりは立派なSDGsです。設計・開発・デザインの部署も貢献できることを再認識してほしいですね。「何か改善したい」「もう一歩進めたい」という問題意識が、企業を活性化させ向上心やモチベーションをもたらしてくれます。
「子ども用品を作っていないからキッズデザインは関係ない」と思われがちですが、子育てしやすい社会環境作りや働きやすさは子育て支援につながり、回り回って自分のことになります。
子育てが終わって復職した人の経験が製品開発に活きるタイミングはたくさんあるし、そこに生活者ニーズがあります。働く場所と家庭・子育てする場所というのは決して相反するものではなく、統合されつつあるのが働き方改革であり、活性化につながるのではないでしょうか。
■マイノリティへの対応
(小谷氏)当社では今年、子どもたちに人気のゲームソフトの教育版を使ったSDGsをテーマにした建築とプログラミングのコンテストに協賛しました。学校に通っている子どもも、事情があって通えない子どもも一緒になってオンラインでの作品づくりで参加できるというものです。マイノリティ、多様性への対応はどうしたらいいとお考えでしょうか。
(高橋氏)「子ども」という枠で考えがちですが、いろいろな子どもがいます。近年は個々の事情に沿った取組みが作品にも増えています。
例えば、「オンテナ」(富士通)はクリップのような形をしたユーザインタフェースです。耳の不自由な子どもが髪の毛等に装着すると、振動と光で体が音を感じる仕組みです。装着すると健常者の子たちと同じように踊ることができます。五感というのがどれだけ幅広くて力があるのか、改めて考えさせられました。
子どもの行動観察は大切です。安全は大前提ですが、安全にしすぎたら恐らく子どもたちは面白くないし、魅力のない製品になってしまう。重篤な危険につながらない、自由に使えるデザインがキッズデザインには一番重要だと思っています。不自由さをどうやってデザインに変えていくか、デザインの力でどう変えていくのか、工夫のしどころではないでしょうか。
(村上氏)マイノリティといっても、ひとくくりに出来ません。集団の中に「一人しかいない」けど対応してみたら、実は「一人じゃなかった」ということもあります。最近では妊活や不妊治療は広く認識されていますが、少し前まで少数の従業員のために働き方の幅を広げるのは高いハードルがありました。しかし、取組んでみたら「言い出せなかったけど、私も」という従業員が多かったという企業の例もあります。
(高橋氏)「些事こそ全て」。小さなテーマでもそこに内包されている課題はものすごく大きく、問題発見・課題発見のポイントではないでしょうか。
■コロナ禍とアフターコロナにおけるSDGs
(小谷氏)コロナ禍になって、住宅、私生活、家族とのつながりが重要になっています。コロナ禍とアフターコロナにおけるSDGsについての考えを教えてください。
(村上氏)「家」というのは、子どもたちにとって大切な世界です。様々な事情がありオンライン学習がままならなかったという事例はたくさんありました。課題を見つけ、どうしたらケアが出来るのかを考える時ではないでしょうか。
「パンデミック世代」という言葉をあえて使いました。2020年に何年生だったかで、出来たこと、出来なかったことは違います。子どもたちは、ひとくくりにされたくないと思うし、アフターコロナでは、大人たちが個別の事情をしっかり考えていく必要があるのではないでしょうか。
(高橋氏)村上先生のお話にもありましたが、その学年で経験することが出来なかった影響というのは確実にあります。心理的なものとして顕在化するのは今ではなく、5年後かもしれないし10年後かもしれない。時間軸で捉えることが出来るキッズデザインは、そうした子どもたちをサポートできる一つだと思っています。
一方で、「オンラインで出来るようになった」「体を動かす重要性を再認識した」などコロナ禍だったから気付いたこともあります。
アフターコロナへのアプローチは非常に重要だと思い「BEYOND COVID-19特別賞」を新設しました。でも、まだ時期が早かったかもしれません。
これから顕在化してくるであろうコロナの影響が、どのようなデザインに活きるか長期的に見ていきたいし、多くのデザインが生まれることを期待しています。
(小谷氏)大胆な変革というお話がありましたが、「大胆」とはどのようなことにチャレンジしたらいいでしょうか。
(村上氏)子どもの発想には「奇想天外」なものがあり、奇想天外だけども、不可能じゃないこともあるはずです。可能性を否定しないということは非常に大事だと思います。
(小谷氏)SDGsの考え方が普及するとキッズデザインもさらに広がるのでは。
(高橋氏)当協議会ではSDGsプロジェクトをスタートさせています。村上先生のお話や私の報告からもお分かりの通り、ハードルは高くありません。SDGsはどの視点からも取組めるし、テーマは何でもいい。まずは参加していただき、考えられることを一緒に一つ一つ積み上げ、最終的に新しいウエディングケーキモデルを作っていきたいと思っています。