子どものやりたい気持ちをサポートするツールとしての「ボタン」

掲載日: 2023.11.21

子どものやりたい気持ちをサポートするツールとしての「ボタン」

子どもがボタンをとめる行動を観察してひらめいた

子ども用のナイトウェアにひときわ目立つ、ユニークな形状をしているボタン。これが子どものやりたい気持ちを後押ししたいという思いが込められた「i do button」です。優秀賞である経済産業大臣省を受賞された、株式会社Discovery Kids代表取締役の森大悟さんは開発のきっかけをこう語ります。
「弊社は保育園を目黒で運営しています。幼児教育が専門ですが、それを背景として子どもが自分で着られるナイトウェア、教育のためのアパレルを手がけました。それがi do buttonす。ボタンを留める動作を思い出してください。まず右手でボタンを持ち、左手で服を持ってボタンホールへボタンを入れ、次に服から左手をボタンに持ち替えて、でボタンをかけ ると思います。
子どもを観察していると、ボタンを持ち、服を持ってボタンホールに入れるところまではできるのですが、服からボタンにこの持ち替える作業ができずに、つまずいてしまうことが多いのです。ボタンの形状に返しをつけて子どもが持ち替えることができるようにしました。このボタンを実装した服がこのナイトウェアです」。

子どものやりたい気持ちをサポートするツールとしての「ボタン」

ボタンを留める時の持ち替えが難しいことに気づき開発に

イヤイヤ期は大人の論理、子どもには大切なプロセス

保育を専門とする同社が、なぜボタンに着目したのでしょうか。そこには子どもの発育発達のプロセスで重要な心理と行動、そしてそれを阻害しかねないプロダクトのデザインのギャップへの気づきがありました。

「2、3歳ぐらいになると何でも自分でやりたいという時期が必ず来ます。コップに自分で牛乳を入れるとか、エレベーターのボタンを押したがるといったことは子育てした人なら経験があると思います。世間ではイヤイヤ期などと言われていますが、モンテッソーリを初めとした幼児教育の考え方では決してネガティブなことではないのです。2歳児あたりのイヤイヤ期は敏感期と言って子どもの成長にとって非常に重要な時期であることがわかっています。この時期に自分でやりたいことをいかにやらせてあげられるかが、その子の将来に関わってくるのです」。

ある年齢における子どもの心理や行動は時に思いもよらぬ事故につながることもあります。大切な点は安全性や機能性を確保しながら、子どもがやりたいという気持ちをもっと後押ししてあげられるようなデザインであることなのです。

「2、3歳の時期にはボタンに興味を持つことが多く、自分でやりたがってトライしたがりますが、先ほどの理由でできない状況がありました。今までは子どもの 手先がまだ発達してないからという理由で子どもの責任と理解されていました。
しかし、子どもの行為を観察していて、これは子どものせいではなく、ボタンのデザインのせいではないかと思い至ったのです。ボタンの形はこういうものという固定観念があって、実はそれは 子どもにとって親切なデザインではないと気づきました」。

子どものやりたい気持ちをサポートするツールとしての「ボタン」

子どものやりたい気持ちを後押しする、新しいデザインを考案

このボタンはチャレンジマインドを育てる教育ツールである

この開発ストーリーをお聞きしながら、デザインの重要性に改めて気づくことができるのではないでしょうか。
それは、「この製品はこの形をしているという先入観・思い込み」と「その年齢にとって、子どもにとって最も重要なことは何か」の二つの視点です。i do buttonの開発はその見事な回答のひとつではないでしょうか。

子どものやりたい気持ちをサポートするツールとしての「ボタン」

イヤイヤ期は成長の証。それをサポートするのがデザインである。

「自分でやりたいという気持ちを尊重し、それが報われる体験を通じて子どものチャレンジマインドと自己肯定感を高めてあげたいと思って、このプロダクトを作りました。
このナイトウェアはアパレルという形を取っていますが、教育のための道と捉えて欲しいです。日常の中にいかに教育を落とし込むかという目線で開発しました」。

    
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