地域発、子どもの体験機会の格差解消へ~アトリエ・バンライ -ITABASHI-
掲載日: 2025.12.2

格差のない体験機会の提供を目指して
「子どもたちの創造力や好奇心が交差し、新しい自分が育まれる場所」を目指して、誕生した場所がアトリエ・バンライである。
様々な体験を通じて、創造力や好奇心を育む取組を、金融機関が中心となり企業・団体と連携して実践している点が高く評価され、子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門・優秀賞(消費者担当大臣賞)を受賞した。
このプロジェクトを手掛けた株式会社三井住友フィナンシャルグループの三島叶子さんはアトリエ・バンライの取組に至った背景を紹介してくれた。
「当グループでは現・中期経営計画で社会的価値の創造と経済的価値の追求、経営基盤の格段の強化を基本方針に掲げて取り組んでいます。
社会的価値と経済的価値を両立させることによって、経済の成長とともに社会課題が解決に向かう幸せな成長の時代を築いていきたいと考えています。その中で重点課題を掲げておりまして、その一つに貧困格差の解消があり、そのための取組として、子どもたちへの教育体験機会の提供を推進しています。今回受賞したアトリエ・バンライも、その一環です。それ以外にも教育機会、体験機会の創出の取組にも注力しています。
例えば、経済的な困窮世帯の子どもたちに、放課後の学び、学習や習い事で使うことができるクーポンを提供したり、キッザニアや千本松牧場、万博体験ツアー等を通じた体験機会の提供も実施しています。」


子どもの体験機会の格差を解消すべく銀行の跡地を改装してオープン
銀行の支店を活用し多様な体験の場へ
「アトリエ・バンライ-ITABASHI-は、2024年の2月まで銀行の出張所として機能していた場所を全改装して、2025年の4月にオープンしました。
約4,000冊の多様なジャンルの蔵書を揃え、企業・団体の皆様から体験プログラムを提供、実施いただいています。地域の子ども食堂にも場所を無償で開放しており、地域コミュニティの交流機能も担っています。
オープン以降、約4か月で利用登録者が324名、実施回数が43回、受講人数が延べ666名と大変多くの子どもたちが利用しています。」
開放感のある空間には好奇心を刺激する多様な仕掛けが見て取れる。プログラムは多彩で、食品会社と組んだトマトの苗植えから野菜を収穫し食べるに至るまでの食育をテーマにしたものや、金融機関ならではの金融経済教育プログラムなど、健全な消費者育成に寄与する内容を実施している点が高く評価され、消費者担当大臣賞に輝いた。
プログラムの展開はさらに広がりを見せているそうだ。
「企業や団体の皆様に多様なジャンルの体験プログラムを開催いただいていますが、メディアにも多く掲載されたおかげで、メディアをご覧になった方からうちも何かできることがないかと連携の相談をいただいています。こうした形で取組の輪が広がってきていると感じています。
SMBCグループの金融経済教育のほか、食育やプログラミング、サイエンス、スポーツ、音楽と多様なジャンルのプログラムを開催しています。板橋区さんのホームページにも掲載いただいたり、区主催のワークショップを開催いただいたりと、自治体との連携も進めています。
子どもの居場所としての安全・安心な運営方法については放課後NPOアフタースクール様に連携、監修をいただいています。
体験プログラムについては8月末時点で25社、確定分も含めますと35社の企業・団体様と連携しています。」


自社の金融教育をはじめ、様々な企業・団体の参画による体験プログラムの実施
地域の企業や専門家との協働のロールモデル
金融機関が子どもの多様な体験機会や居場所の提供にいかに貢献していけるか、その取組は続いている。三島さんは語る。
「銀行跡地を改装して作った施設ですが、安全・安心な居場所作り、多様なジャンルのプログラム実施といった面は私ども単独で行なえるようなものではございません。
今後も多くの企業、団体、自治体の皆様にお力添えいただきながら、子どもたちの居場所作りに取り組んでいきたいと考えています。」
子どもの体験にとって重要なことは、子どもが自らやりたいこと、興味あるテーマを見つけ、取り組むことである。
その意味で幅広いステークホルダーがここに関わり、多様なプログラムを提供している点は、子どもの体験機会を広げ、出逢うべきテーマに触れる可能性を高めてくれる。各地域への広がりを期待したい優れた活動であると言えよう。

地域の企業、専門家と協働して今後もプログラムの拡充を目指す
