福島の子どもが日本一、幸せになるために ~Smart Wellness Town PEP MOTOMACHI
掲載日: 2021.12.6
震災による子どもへの影響は終わっていない
福島の子どもたちが、元気に幸せに育って欲しい、それが街にとっても活気を取り戻すきっかけになるに違いない。そんな思いを胸に、子育て支援コミュニティづくりに邁進する取組が福島県郡山市で進んでいます。少子化対策担当大臣賞を受賞した「Smart Wellness Town PEP MOTOMACHI」を推進する医療法人仁寿会・菊池医院院長の菊地信太郎さんにお聞きしました。
「私の活動の原点は10年前起きた東日本大震災にあります。当時、子どもたちの環境は非常に厳しく、不自由な状況が続きました。今もなお、その影響は残っています。私の掲げた2つのスローガンは、“福島の子どもたちを日本一元気に、そして日本の子ども達の真の復興は福島から”でした。これを実現するための3つの柱が、子どもたちを元気にする子育ち支援、保護者を元気にする子育て支援、子どもに関わる人を元気にする地域子育て力アップ、です。こうした基本的な活動方針のもと、震災後10年間さまざまな活動を行ってきました」。
心地よい木の空間で自由にのびのびと過ごす
周辺地域はドーナツ化現象で寂れてしまったといいます。活動の中で感じたことが、子どもたちの生きる環境が持続可能ではなかったかもしれないという思いでした。
「日本大学工学部ではロハス工学と銘打ち、健康と持続可能な社会を工学で支えようという研究を行なっています。この知見を融合させた街づくりをしたいと思い、同学とプロジェクトを進めました。診療所は、福島県産の木材をふんだんに使った縦ログ工法によって建てられています。1階の診療所の待合室には約900冊の絵本を並べ、心地良く温かみのある空間を提供しました。2階はホールになっており、様々なイベントや勉強会等が行われます。病児保育室は普段、保育所に通っている子どもが病気の時に預かる場所です。薬局・ラボ棟は1階が薬局、2階はIT関係の企業が入っており、こちらもすべて木でできていて、ログハウスでできています。敷地内にはオッターパークという小さな公園を設けています。人工芝を敷き詰め遊具もあり、子どもたちが自由に遊んだり、医院や薬局に来た方々がくつろいだりする場所になっています」。
資源を有効活用して、次の世代につなぐ
縦ログ工法は福島県産の木材を使った施設ですが、建物を壊しても再びその木材を再利用できるように設計されています。薬局・ラボ棟は東日本大震災で使われた仮設住宅をそのまま再利用しています。
「今までの大量生産・大量消費の時代ではなく、資源を有効活用し無駄なく使う、自然に配慮した技術です。2階ホールでは様々なイベント活動を行なっており、年間約300人近い親御さんが集まってコミュニティを形成する場所になっているだけでなく、健康教育、健康啓発を行う場所でもあります。コロナ禍の中でお母さん同士のコミュニティづくりが難しい状況にありますので、医療機関にこうした空間を持つということは意義あることだと感じています」。
日本大学工学部が提唱しているロハス工学の技術の実証実験の試みでもあります。学生の研究の一環になれば嬉しい、菊池さんは語りました。
「こうした取り組みが続くように願っていますし、福島の子どもたちが日本一元気になるような礎になればよいと思っています」。