キッズデザインオンラインカフェ“「人が育つ」 科学館とは ”

掲載日: 2021.10.18

「人が育つ」科学館とは〜福岡市科学館の取り組み〜

2021年7月28日に福岡県福岡市にある「福岡市科学館」でキッズデザインオンラインカフェが開催されました。
2020年に「キッズデザイン賞 審査委員長特別賞」を受賞した同科学館では、常に子どもに寄り添った展示やコミュニケーションを心がけているそうです。会場から事業統括責任者の高橋伸幸さんと、サイエンスコミュニケーターの方々がその取組みを紹介してくれました。

「クリエイティブな力」を引き出す

福岡市科学館のコンセプトは、「人が育つ科学館」です。その第一歩は、科学を楽しむこと。楽しむ中で芽生えた疑問や探究心から、「クリエイティブな力」を引き出すことを目指しています。
つまり、サイエンス(「S」=インプット体験)とクリエイティブ(「C」=アウトプット体験)をつなぐのです。そして、つなぐお手伝いをするのがサイエンスコミュニケーターの皆さん。子どもたちと触れ合いながら科学の面白さを伝え、子どもたちの声を聴き、表現することを促し、共感する――そうすることで子どもたちの創造性やコミュニケーション能力等は育まれるのです。

今回は、科学館で行われている4タイプのアクティビティが紹介されました。
☆講座型「ダーウィンコース」
☆アワード型「クリエイティブアワード」
☆対話型「サイエンスショー」
☆展示型「特別展 グラバーが運んだみらい展 蒸気のひみつ 」

子どもの「何だろう?」を大切に

講座型ですが、「ダーウィンコース」は主にフィールドワーク(本講座)と、探Qゼミの2本立てになっています。九州大学の先生の協力を得て自然と触れ合います。アリや小エビ、植物などに触れて発見した「これ何だろう?」という科学に対する疑問から、「これはこうなんじゃないかな?」と友達に伝えたり、自ら考えて記録したりすることが表現です。SとC(インプットとアウトプット)です。

サイエンスコミュニケーターは、子ども一人ひとりのSとCの作業に寄り添い、「非認知能力」を養うのだといいます。非認知能力とは、意欲や協調性、自制心、創造性、コミュニケーション能力といった“測定できない個人の特性”です。

高橋さんによると、非認知能力が養われると子どもは自分の強みを理解し、また、他人の良いところを認識できるといいます。

体験を通して九州大学の教授たちと一緒に自然科学に触れるフィールドーク(S)
サイエンスコミュニケーターを中心に参加者との対話から疑問を解き明かそうとする探Qゼミ(C)

ライブ感を重視、みんなで楽しく学ぶ

ダーウィンコースをはじめ、科学館で展開されるアクティビティは、どれも楽しく学び、考え、発信する力を育てます。

例えば、館内で定期的に開催される「サイエンスショー」は、娯楽性を重視した体験型の科学実験で、老若男女問わず人気のアクティビティです。ステージ上では科学のさまざまな実験道具や材料を駆使し、科学に興味が湧くような工夫を凝らしています。

サイエンスショーの中で来館者に問いをなげかけるサイエンスコミュニケーター

ショーを担当するサイエンスコミュニケーターは気を付けている点を教えてくれました。
「シナリオ通りに実演していては、テレビを見ているのと同じです。ライブ感を大事に、お客さんの反応を見ながら客席を巻き込みます!」

対話型とあるように、実演するだけのショーではありません。はじめは遠慮がちに見ていた子どもも徐々に率先して発言してくれるそうです。一方通行ではなく、相互通行によって一つのショーが完成するのです。

見て、触って、参加する

福岡市科学館は、参加型体験装置を中心に展開されており、多くの工夫を凝らしています。

2020年の「クリエイティブアワード」では、プログラミング的思考を育むCawaiiパズルのアイデアを全国の子どもたちから募集しました。入賞したアイデアを参加型体験装置として展示化したものです。プログラミング的思考からパズルを提案する子どもと、そのパズルを体験する子どもが生まれ、その両方をつなぐのが科学館の役割です。

最優秀賞:アイデア提案者とワークショップを重ね展示化した「くまさんとダンス」

「特別展 グラバーが運んだみらい展 蒸気のひみつ」は、蒸気機関車を日本で初めて走らせたグラバーの功績を紹介しています。蒸気の仕組みが分かる体験装置を置いたり、LINEを使ったナゾ解き脱出ゲームを作ってグラバーを知ってもらったり、子どもたちは夢中になって楽しんでいます。

高橋さんは、参加型体験装置であっても展示は置いてあるだけでは、不完全なものだと言います。
「展示だけでは科学の本質をきちんと伝えられませんし、誤解を招くこともあります。そこに人(サイエンスコミュニケーター)が関わることで、S+Cが生じ展示の理解が深まります」
このように、展示体験を通してサイエンスコミュニケーターが子どもたちに寄り添い、非認知能力を引き出そうとします。

高橋さんは、人の能力についてこう話します。
「人工知能やAIが発達して、(人類の能力を超える)シンギュラリティが起こると言われます。しかし、この科学館に来ていただけると、人の能力って凄い! ということが分かっていただけると思います」

コロナ禍でも出来ること

コロナ禍のため、今回のキッズデザインカフェは会場とオンラインのハイブリッド式の開催となりました。オンラインのメリットでしょうか、“全国”から様々な年齢、職業の方が参加されました。
科学館の中を自由に見学することはできませんが、各フロアからサイエンスコミュニケーターさんが中継してくれたので、PCの前に居ながら館内の様子がよくわかります。

参加の皆さんは、活動報告を熱心に、興味深く視聴しており、多くの質問が寄せられました。
例えば、
「子どもをはじめ学ぶ側はすぐに正解を求めてしまいがちです。答えを知ることよりも、科学的思考が大切だと思うのですが、考えることを促すためにどのような工夫をしていますか?」
これに対してサイエンスコミュニケーターは、学ぶ側だけでなく自らも正解のある質問をしがち、としながら 「考える力を身につけてほしいので、具体的に考えさせられるようにできるだけ『How』の質問をするようにしています。どうやったらいいかな? なぜかな? というクエスチョンです」

「考えることを促す」には、テクニックが必要かもしれません。
福岡市科学館のサイエンスコミュニケーターの皆さんは、日々、伝え・聴き・共感するスキルを磨いているそうです。

緊急事態宣言による休館や、来館者の人数制限、参加型体験装置等の消毒といったコロナ対応で思うような活動ができない中でも、オンラインを使った発信など新たなことにどんどん挑戦していくと言います。
参加者の中には、「コロナが収束したら、ぜひ、子どもを連れていきたい」「子どもの頃に行ってみたかった」と話す人もいました。
皆さん、それぞれが気付きや振り返りから何かを得たのではないでしょうか。

右から、事業統括責任者 高橋 伸幸 氏とサイエンスコミュニケーターのみなさん
    
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