オンラインの時代だからこそ、子どもの安全を最優先に ~子ども用ヘッドセット

掲載日: 2021.11.18

学校現場でパソコンやタブレットが日常に

「GIGAスクール構想」は、2020年度から始まった10年ぶりの学習指導要領の改訂を受け、小中高校などの教育現場で児童や生徒が、パソコンやタブレットといったICT端末を活用し、デジタル教材やAIを活用した学習などを目的としています。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、オンライン授業や在宅学習のニーズが高まったこともあり、端末の導入が一気に進んできました。安全安心に貢献するデザイン・子ども部門の経済産業大臣賞を受賞した「子ども用ヘッドセット」はこうした背景もあり生まれたものです。
エレコム株式会社の商品開発部オーディオチーム・チームリーダーの島村 晃さんが開発のポイントを語ってくれました。
「2020年からGIGAスクール構想が始まり、現在、ほぼ全自治体に配られたといわれています。弊社のチームはオーディオ機器を扱っていることから、子ども向けのヘッドセットの開発に取り組みました。まず、子どもにはどのようなヘッドセットが必要かということを考え、3つのコンセプトを決めました。一つ目は成長に合わせた設計、二つ目は安全に使える仕様、3つ目は使いたいと思うカラーです」。
一つ目の成長に合わせた設計では、体格の変化が大きい時期である子どもがストレスなく使えるようにデザインに取り組んだそうです。
「子どもの頭のサイズの約2000人弱のデータをもとに、最適なサイズにしています。ヘッドセットはサイズやフィット感が重要で、聞こえ具合やマイクの集音性に大きく影響します。サイズ調整機能や可動式の耳当てを採用して子どもの成長に合わせた設計にしました」。

深刻化するヘッドフォン難聴とは?

二つ目の安全に使える仕様とは一体どういうことでしょうか。実は今、ヘッドフォンによる子どもの成長や健康に対する、ある深刻な影響が心配されています。
「皆さんはヘッドフォン難聴という言葉をご存知でしょうか。大きな音で音楽を聴いていると気づかないうちに聴力が落ちているという危険なものです。特に成長過程で影響が多く、WHO(世界保健機構)の発表では、世界の子どもの半数に近い11億人が難聴の危機に立たされていると言われています。パソコンやスマホを使う機会が増えると危険性も増えますので、この製品はあえて大きな音が出ないように設計しました。一般的なヘッドフォンは100デシベル前後のものが多いのですが、100デシベル前後でも週に1時間程度、難聴の危険性が高くなると言われています。100デシベルを例えると、電車が通過する際のガード下ぐらいの音です。この製品は85デシベルという音量制限をして子どもたちが安全に使える仕様にしました」。

使いたくなるカラーをラインナップ

3つ目がカラーリングです。ここでは以外な発見があったそうです。
「ヘッドセットは通常、黒が多いのですが、子どもが使いたいと思うカラーを展開しました。水筒や筆箱、ランドセルなど、子どもの持ち物で人気のあるカラーを参考にしています。カラーサンプルを作成して、子どものいる親子にアンケートやヒアリングを実施しました。親が子どもに買い与えたいカラーで上位でも、子どもからはあまり人気がなかったもの、例えば白などもあり、面白いなと感じました。今回、5色の展開をすることにしました」。
同じコンセプトでイヤホンタイプ、軽量モデルなどラインナップも充実してきたそうです。こうしたデザインの進化で、時代のニーズに応えながら、安全に快適に子どもたちのデジタルやネットワークを活用した学習をサポートしてくれるでしょう。


第15回キッズデザイン賞受賞記念シンポジウム

    
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