課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

掲載日: 2022.11.28

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

子どもたちの課題解決力を育む2つのコース

近年、教育に関する話題のなかで、「非認知能力」という言葉を聞くことが多くなりました。非認知能力とは、協調性や忍耐力、計画性、創造性、コミュニケーション能力といった、テストで判定できない、あるいはしにくい個人が持つ能力のことを指します。

子どもたちの創造性と未来を拓くデザインのクリエイティブ部門で経済産業大臣賞を受賞した、「未来を拓くジュニア科学者養成講座『ダーウィンコース&ニュートンコース』」はそんな非認知能力を身に着けるためのプログラムです。開発を手掛けた株式会社トータルメディア開発研究所PPP事業部専任部長の高橋伸幸さんに聞きました。
「このプログラムは福岡市科学館と九州大学との共同研究プロジェクトです。子どもたちが課題を解決する力を育むための、発想力、表現力、共創力、自制心などを身につけてもらう実践的な教育プログラムです。分野を横断する学際的な仕組みで、自然史領域で自然、生物、環境、人間を扱ったダーウィンコース、理工学領域で天文、物理、化学、情報を扱ったニュートンコースがあります。講座の構成は本講座と探Qゼミに分かれ、本講座が研究者の研究プロセスを追体験できるもの、特徴的な探Qゼミがそれを受けて子どもたちがクリエイティブに表現する講座です」。

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

フィールド中心の「ダーウィンコース」

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

実験中心の「ニュートンコース」

開発にあたっては研究者、デザイナー、クリエイター、サイエンスコミュニケーター、学生のメンターやサポーター、様々な立場の方々のサポートを受けたそうです。
「まず本講座はフィールド中心で ダーウィンコースは九州大学敷地内の九大の森などをフィールドにして、様々な知恵や情報を学ぶことができます。ニュートンコースは難しい理工学の世界を数式や方程式で示すのではなく、すべて実験に置き換えて理解しやすくしています。探Qゼミでは子どもたちがほかの人にプレゼンテーションしたり、絵に描いたりといった、自分で表現する活動を中心に行なっています。このプログラムは 親子で参加できますので、家に帰っても両親とのコミュニケーションで知識を深めていくこともできます」。

ポイントは個別のフィードバックと直感で感じられる実験キットの開発

開発にあたって悩んだ点は、課題を解決するプロセスとは一体どういうものか、ということでした。科学を一方的に伝えるのではなく、授業を受けた子どもたちにそれを伝える創意工夫をしてもらうことを重視しました。表現方法は様々にあるため、講師やスタッフが多様な視点で子どもたちにフィードバックしてあげることに注力してきました。観察するだけで興味をそそられる「ウォーターパール」などオリジナルの実験器具は、子どもたちの視点に立って、サイエンスコミュニケーターが考えたそうです。またアプリケーションを開発して 視覚的に理解させることに注意を払ってきました。学びに使う時間も十分にとっていることが特徴です。

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

流れ落ちる水を点滅するストロボで見ると止まって見える「ウォーターパール」

「プログラムはロングスパンで計画していて、単年度ではダーウィンコース6テーマ、ニュートンコース6テーマ、これを1年でパッケージングしています。2020年から始め、 昨年度はダーウィンコースに中級、ニュートンコースに初級、の2本の柱を作り、 複数年で計画しています」。

疑問を持つ、仮説を立て、分析する、そして表現と伝達へ

まずは観察すること、そこから疑問をみつけ、自分なりの解決策を導くこと、それを人に伝えるための表現方法の工夫、までをひとつの流れのなかで身に着けることが大切、と高橋さんは言います。
「科学のインプットから疑問や仮説を立てる、クリエイティブに想像し、表現する、それらを個別に評価する、この3段階で構成しました。子どもでも研究者並みの分析調査をできる子もいます。研究者やクリエイター、サポーター、サイエンスコミュニケーターが様々な視点で子どもにフィードバックすることで、学校の偏差値の評価だけではなく、自分の良いところを見つけてあげられる点が、この講座の特徴です。最終的に個別のブックレットを卒業式でもらいます。インプットされたサイエンスから発想や表現、改善、成長を促すプロジェクトになったと思います」。

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

3つの流れに沿って確実に力をつけるプログラム

課題をみつけ、情報を分析して、解決策を導く、これからの学びに必要なこと

自分なりの視点で表現することを大切にした

いま社会の構造や課題はどんどん複雑化、業際化しています。大切なことは、知識や情報を記憶することではなく、問題そのものをいかに捉えていくか、解決のために何が必要か、それをいかに他者とシェアして取り組んでいくか、であることを再認識させた作品でした。

    
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