多様な立場の子どもがひとつ屋根に集う、育みのためのセンター

掲載日: 2023.12.25

多様な立場の子どもがひとつ屋根に集う、育みのためのセンター

すべては子どもたちのために、専門スタッフを揃える

広々とした芝生の園庭では思い思いに子どもたちが遊び、児童発達支援や放課後等デイサービスの部屋では遊具や学習道具の元に子どもが集まる様子があります。
ここはひとつ屋根の下に未就学児童、学童期の子ども、健常とチャレンジドの子どもたちが一緒に過ごす、静岡県御殿場市にある「フジ虎ノ門こどもセンター」です。運営を担う社会医療法人青虎会の林飛香さんはこう語ります。
「当センターは障害児や小児難病の領域として児童発達支援、放課後デイサービス、保護者の就労支援として放課後児童クラブを併設しています。
保護者の子育て不安解消のため、『すべては子どものために』をテーマに地域の持続可能な暮らしを支える場を目指しています。発達に課題のある子どもへの行政支援の不足、また発達障害の子どもについてもきちんと見てもらえる医療がないという声が大変多く、新たな地域課題として認識していました。
多岐にわたる領域の人材確保が大変難しかったのですが、元々病院を経営していたことでリハビリを始めとする看護師、心理士などのスタッフをすぐに揃えることができ、全国に先駆けひとつ屋根の下で一貫したサービスを提供できる子どもセンターを立ち上げることができました」。

多様な立場の子どもがひとつ屋根に集う、育みのためのセンター

ひとつ屋根の下で未就学児、学童期、健常とチャレンジドが過ごす

多様な立場の子どもに触れることで、優しい気持ちが

多様な専門分野のサポートスタッフがいることに加え、多様な立場にある子どもたちが一緒に過ごすことで、現れる効果には目を見張るものがあると言います。
「当病院の施設の横にあるセンターのため、子どもを支えるサポートメンバーがいることが特徴です。

例えば人工呼吸器をつけた子どもの場合、呼吸器の管理が難しく入所を断わられてしまうことがあるのですが、サポートメンバーが多くいることで、その子の個性を見出しながら関わりをすることができます。
何よりも障害のある子も、ない子も一緒に過ごすことを大切にしています。動くことが難しい寝たきりの子に対して、その子に優しくしてあげたい、と別の子どもが思うきっかけ、優しい気持ちを与えてくれるという役割を担っているのです。少し乱暴な男の子もその子を見ると手を優しくさすってくれたりします。

また、ドッグ・セラピーも行なっているのですが、犬を介したコミュニケーションを取ることで障害のある子もない子この犬に触るという行為の中でコミュニケーションを育むことができます。全ての子どもは子どもの中で生きて、役割を果たしているのです」。

多様な立場の子どもがひとつ屋根に集う、育みのためのセンター

受付を入ると、左が児童発達支援、右が放課後等デイサービスになっている

ドッグ・セラピーで共通の体験をすることで思いやる気持ちを育む

子ども同士が関わることが、これからの人生に役立つ

障害を持って生まれても、そこにある役割を果たし、社会性を育みながら大人になる姿を日々、想像している、と林さんは話してくれました。
「保護者には、子育てはひとりでなくてもいいよ、と感じてもらえるように環境を整える努力をしています。医師の診療でもひとりでなく、みんなの愛で子どもを支えていこうね、お母さんさんが健康でなければ子どもも健康ではいられないよ、というスタンスで取り組んでいます」。
 子どもセンターではインクルーシブ活動を重視しているそうです。個々の興味・関心を損なうことなく、自由な体験を促すことが大切、ということです。
「子どもは自然と子ども同士を求めていきます。あれはしちゃだめ、これはしちゃだめと大人は言うのは簡単ですが、できるだけ子ども同士で関わって欲しい。
そんな気持ちを大人が助けるようにしています。そのなかで大人になるまでの大切な期間に様々な経験をすることで、大人になった時に周りの多様な人とどのように関わればよいのか、自分がどのような役割を果たせるのか、を考えます。
2歳から高校生までの子どもたちが同じ屋根の下で考えられる、そうした関わりづくりを子どもセンターが行なっています。今後も地域で皆で支え合えるような活動を継続したいと思っています」。

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