伝統と現代、地域と子育て、三世代をつなぐ一本の帯

掲載日: 2023.12.27

伝統と現代、地域と子育て、三世代をつなぐ一本の帯

横浜の地場産業にヒントを得た子育てアイテム

一本の長い帯が抱っこ紐に早変わり。ユニークな子育てグッズは横浜の伝統的な技術に支えられた優れもののデザインです。「濱帯」はその機能性や男性の育児参加を促す製品として、男女共同参画大臣賞を受賞しました。株式会社ワンスレッドの半田真哉さんはこう語ります。
「私たちは子育て応援ブランド『papakoso』というブランドを2017年からスタートしています。papakosoはパパの子育てからネーミングしました。パパの子育てから家族の笑顔というテーマのもと、家族に笑顔が広がるサービス、夫婦のパートナーシップが深まるようなサービスを展開しています。例えば、抱っこバッグの先駆けともいえる商品があります。父親が乳幼児と出かける時に自信を持って楽しく出かけられて、疲れた時には抱っこ紐になるという製品で、最新版では抱っこ紐として安全性を認証するSGマークも取得しています。

今回、受賞した『濱帯』は長さ5メートルの1本の帯です。もともと日本にある、さらし木綿などは一反10メートルで着物1着分になるといいますが、その半分の長さの帯です。
この帯を通じて地域と人、人と人とをつなげていく、さらに地域を活性化するような取り組みができないかと考えて開発しました。実は横浜は横浜港開港以来、着物の加工で大きく発展した経緯があります。今でも縫製や捺染の技術が生きています。こうした地場産業を活用して濱帯を作っています」。

伝統と現代、地域と子育て、三世代をつなぐ一本の帯

5メートルの1本の帯が自在な使い方を提供してくれる「濱帯」

平時も、非常時にも使える利便性が特徴

男性の子育て参加をテーマにさまざまな製品を開発、販売してきた同社ですが、これまでの製品にはない特徴がこの濱帯にはあるそうです。
それが『フェーズフリー』、普段使いでも、非常時にも使えるという点です。
「1本の帯という非常にシンプルなデザインですが、子どもをおんぶしたり、抱っこしたり、例えば応急処置の道具としても使えたり、いざという時にはロープの代用にすることもできます。子どもだけではなく、大人の怪我人を搬送するような道具にも使えたり、くたびれてきた最終的にはふきんとしても使えたりと、使い切ることができるアイテムです。様々な用途がある、フェーズフリーのアイテムと言えます」。

伝統と現代、地域と子育て、三世代をつなぐ一本の帯

地場産業の活性化、人と人をつなげる役割を担って欲しいとの思いが

子育ても、防災も、知恵の伝承にもつながる

日本の、まさにユニバーサルデザインの原型のような帯。その様々な使い方は本来、祖父母から親へ、親から子どもへと継承されていくものでした。そうした文化をつないでいくことも濱帯の役割と考えているそうです。
「日常生活における帯の使い方を知っている方も今では少なくなっています。

例えば私の祖父、祖母世代は1本のさらしでおんぶ、抱っこをしたり、キッチンにはふきんがあったりと、様々な使い方をしていました。
地域の元気なおじいちゃん、おばあちゃんに現役のパパ、ママが使い方を教わって、そこには赤ちゃんもいて、というような三世代交流ができたり、男性の家事や子育て参加が当たり前にある社会づくりに向けて、何か取り組みができないか、ということで活動しています。
横浜市中区の本牧で行われた防災フェアでは濱帯の体験コーナーを設け、抱っこ紐の体験会や子どもたちに濱帯の綱引きを体験してもらい、ロープとしての強度を感じてもらいました」。

伝統と現代、地域と子育て、三世代をつなぐ一本の帯

男女での子育て参加、知恵の伝承、防災教育など多面的なアプローチ/p>

現役の子育て世代のみならず、市内の高校生がSDGsの取材で来てくれた際には濱帯を使った体験も行なったそうです。こうした体験の機会を多く設けていくことで、地域の伝統産業と子育て支援、男女の子育て参画の環境づくりに貢献したいと考えていると言います。
「母親、父親のどちらかに偏ることなく、夫婦で子育てを共有できれば、子どもと良好な関係も築け、愛着も深まるでしょう。父親の主体的な子育ては家族のウェルビーイングにもつながります。
そのきっかけとして、濱帯を使ってもらえればと考えています。子育てのみならず、防災や料理などさまざまな分野で活躍できると思いますので、受賞をきっかけに今後も多くの方々と連携して広げていければと考えています」。

    
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