2022.2.21

ジャクエツ「with」開発インタビュー(前編) ~子どもの頃のワクワクを詰め込んで~

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落ち着いたダークトーンカラーのボディに高傾斜のスライダー。
ジャクエツさんの総合遊具「with」には私たちの遊具のイメージを覆す、スタイリッシュで挑戦的なデザインが詰め込まれています。
今回はその開発秘話を伺いました。取材には、スペースデザイン開発課の稲口さん、浅田さんが参加してくださいました。

左)稲口さん 右)浅田さん

だれかと一緒にトライする遊具を。友だちと、兄弟と、ライバルと

まず最初に、withの開発を始めたきっかけについて教えて頂けますか?

(稲口さん)歴史的な背景から少し説明させていただきます。昭和から平成に入り、遊具での子どもの事故が顕在化してきました。遊具以外でも回転ドア事故が大きな契機になったと思います。事故を何とかしなければということで、業界全体で様々な取り組みや安全基準が設けられ、キッスデザインが立ち上がり、弊社も平成の時代を通してずっと安全性を重視した開発を続けてきました。
しかしそれよってアクションの大きな遊具は減り、今では子どもに年齢にあった遊具で遊ばせると「つまらない」という感想が返ってきてしまう、という課題も生まれていたんです。
一方で、子どもたちが少し難易度の高い遊具で遊んでいる時には、友だち同士で一緒に取り組む様子が見られるんですね。助け合ったりとか、競争し合ったりとか。これは面白いなということになり、協同して遊ぶことを主軸にした遊具を開発しようと決まっていきました。この、人と一緒に、というところがwithのポイントになります。
「with」の商品名の由来も、ここからきています。お友だちと一緒、兄弟と一緒、あるいはライバルと一緒。

バブル期から平成の時代を経て、現在遊具業界が抱えている課題に対するある種の答えとして、このwithがあるということでしょうか?

(稲口さん)そうですね。なので従来の遊具に比べると、withはいささか難しそうだぞと。
安全性でがんじがらめになってしまうのではなく、ちょっとずり落ちそうだとか、必死にならないと登れないなどの難易度の高い機能を、チームで開発していきました。誤解を恐れずに言えば、少々リスクを取った設計にチャレンジしてみた、ということになります。

「挑戦」のコンセプトをカラーに、機能に、結びつけていく

withは、子ども向け遊具とは思えないスタイリッシュな色合いだったり、急傾斜のスライダーがあったりと、デザインや機能が特徴的ですが、こういった設計をされた経緯を教えてください。

(浅田さん)今までの遊具って赤とか黄色とか青とかの原色でカラフルに塗られていることが多かったと思うんです。ただ、今回withのコンセプトに「挑戦的にトライできる遊具」というキーワードがあったので、配色もそれと関連付けられないか、という考え方をしたのがきっかけです。
具体的には、保育園・幼稚園に伺って話を聞いたり、フィールド調査をしたりしました。 そこで「挑戦」を考えると、子どもたちにとって今までより一歩高いレベルに手を伸ばす、というニュアンスが必要になるなと思ったんです。
子どもって大人が使っているものを背伸びして使いたがりますよね。例えば食事でも子ども用の箸ではなくて大人と同じものを使いたがったり。それはリサーチ中の大きな気づきでした。大人が好むような色だからといって、それは子どもに与えていけない理由にはならないのではないか。それで、落ち着いたカラーをベースにしていこうと決まっていきました。
そこから具体的な色の組み合わせを検討していくわけなんですが、園に行って子どもたちの様子を見ていると、園児の組み分けにはカラフルな帽子を使っていることが多いんですよ。その時に、挑戦的な難易度の遊具で遊んでいる子どもたちがカラフルな帽子をかぶって彩度の高い遊具の中にいると、先生方が子どもたちの様子を把握しづらく不安なのではないか、ということに思い当たったんです。そこで、彩度を落としたダークトーンのカラーを選んでいく、という方針ができました。結果的に、withのコンセプトとマッチした配色をすることができたかな、と思います。

そして、遊具の機能ですけど、「難易度の高い遊具ってなんだろう」という課題をもっていろいろな場所にリサーチに行ったんですが、児童向けの滑り台で遊ぶ様子を見ていると、怖いからなのか、初めのうち子どもたちはできないんです。でも、あるとき一人の子が「えい」って滑り出すと、最初は誰も滑れなかったのに、次の子からも次々と滑れるようになるんですよ。「人の真似からスタートする遊具はレベルが上がっていて難しい遊具なんだな」っていうことは大きな発見でした。開発のきっかけはそういうところにありました。

(稲口さん)色について少し補足させてください。近頃のキッズデザイン賞に入る建築物だとか保育施設などは、かなりクールな外観をしていますよね。そういった場所に合う遊具ってなんだろうということを考えた時に、原色の遊具では無いのではないかという思いもずっと持っていました。 そういう意味で、我々としてもチャレンジをした部分があるんです。今まで弊社でもこういう色調のラインナップはありませんでした。塗装色も普段は既に決まった規格色を使うわけです。今回は何色か、このwithのために色をつくってもらったりしました。

続きは、後編に続きます。

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