2022.5.1
身近な絵の具で子どもたちに本物の香りをお届け
100%天然のエッセンシャルオイルと塗料を混ぜ合わせた新しい絵の具ブランド「香の具」。絵の具と同じように混ぜ合わせることで、香りの表現は豊かに変化し、水に垂らせば香水にもなる。身近な香りから初めて知る香りまでを楽しみながら大人にも子どもにも喜ばれるアイテムです。
今回は、開発者である企画とデザインを提供する「オクノテ」代表 清水さん、様々なフレグランス商品の製造するGRASSE TOKYO株式会社 藤井さんにお話しを伺いました。
身近な絵の具で子どもたちに本物の香りをお届け
Q:早速ですが製品の特長を教えてください。
オクノテ清水:香の具はいわゆる水彩絵の具になります。それに加え、天然の精油と言われる植物から抽出した香り成分を色ごとに配合しています。例えばオレンジ色だったらオレンジの香りがする精油(アロマオイル)を混ぜ、それぞれの色に香りがついています。単色で水彩絵の具のように使っていただくことも出来ますし、赤と白を混ぜてピンクにするとかも、もちろん出来ます。また、そのような普通の使い方をしながら香りを単品でもブレンドしても楽しめる絵の具になっています。
Q:製品の企画のきっかけを教えてください。
オクノテ清水:きっかけは、東京都と日本デザイン振興会が開催している東京ビジネスデザインアワードでした。当時、GRASSE TOKYO様がテーマ企業として、デザイナーからの案を募集されていたんですね。そこで、香りを広げるアイデアとして絵の具に混ぜたらどうか、というのを私たちの方で提案させていただき、一緒に商品開発する流れになりました。
Q:製品を企画するうえで、どのようなことに工夫や配慮されましたか?
GRASSE TOKYO藤井:植物から抽出される精油は、主に葉っぱから取れます。ですので、それを組み合わせていくと必然的に緑系の色ばかりになるんですよね。
「それはそれでおもしろいのかな」という話になり、緑の中でも色々な緑を出しながら東京ビジネスデザインアワードの最終審査会に挑みました。その時、審査員の方から「絵具はそれぞれ色がないと面白くないから、作ったほうがいい」と、率直なアドバイスをいただきました。元々それは感じてはいましたが、はっと気づかされました。
最終的には絵具メーカーさんの持っている基材を使うことになりましたが、絵具メーカーさんの絵具なので、絶対的にきれいな色がでる。その中に香りを付けていきました。
どの色にどの香りをつけるかにも拘りました。植物の精油の中でも色が取れるもの、イメージ的にぱっと想起しやすい例えばイランイランだと黄色とか、他の色もなるべく展開できるようなもので精油を選んで作りました。
また、色の抽出部位が限られているので、偏ってしまうというのが一番の難関点でした。最後に色と香りを落とし込むときに、ブレンドしてもいい香りになるものに調整をしていくのが商品化する上で一番難しかったところですね。
Q:9種類の色に拘りはありましたか?
オクノテ清水:チームの中に、絵を実際に仕事としているメンバーもいたので、絵具として何種類が適切かというところの知恵をもらいました。元々、そんなに色数は考えていなかったのですが、やはり必要な色数があると配色も香りも楽しめるのでこの9種類になりました。香りをベースに色を考えていくのですが意外と青は自然界にないので難しかったですね。
GRASSE TOKYO藤井:食べるものだとブルーベリーとかはありますが、精油はとれないんですよね。最後に色が決まったのはジェニパーベリーでした。実は、お酒のジンの香りなんです。
聞きなれない名前の植物も身近に感じてもらえるようになったらいいですね。
Q:この作品を通じてお子さんに期待されていることや開発者としての想いを聞かせてください。
GRASSE TOKYO藤井:植物の香りは世界中に本当にたくさんあるんですよね。精油を通して植物自体の香りを知ってもらうきっかけにもなるし、「初めて知った香りと、すでに知っている香りを混ぜると更にどういう香りになるの?」と、そういったところまでを学んでいただける教材的な要素になるといいなと思っています。
香りは、学校の授業でもないですし自然界の中にどれだけ行ったかで覚えるようなものでどうしても触れる機会が少ないんですよね。「香りの視点で学ぶ」という身近な教材となり、植物や自然に興味を持ってくれたら嬉しいです。香りは、五感に働きますし記憶に残る一番人間の中でも特殊なところです。小さい頃に覚えた感覚は、多分大人になっても忘れない。遊びながら覚えていってほしいですね。
Q:香り名は点字でも読めるようになっているのですね。点字を取り入れようと思った経緯などあれば教えてください。
GRASSE TOKYO藤井:企画の段階から「点字は入れたいね」と話していました。絵の具は、どうしても目が見える方向けの教材ではありますが、そこに香りが加わることで香りを手がかりに絵を描くことができる。目で見たものとは全く違う絵が生まれてくるのではないかと思っていて、絵を描く学びを健常者以外にも広めていきたい想いはありました。
GRASSE TOKYO藤井:商品のパッケージには表は香り名が、裏には色が書いてあります。点字でも、表裏同じように書いてあります。色覚、色の判別が難しい方にも目にハンディを持っていて難しい方にも、色々な表現ができるしそれがアート作品になったら面白いよねという話をしています。
Q:今後の取り組んでいきたいことや想いを教えてください。
オクノテ清水:数えきれないくらい香りはあるので、今後は種類を広げ、香りについて知っていただくきっかけを増やしていきたいです。
日本の草木もたくさんあるので、そういったテーマで括ってみるのも面白いですね。私たちは、絵の具を売っているというより、香りを売っている会社だと思っているので、「香りのする絵の具」を体験いただける機会をもっと増やしていきたいです。海外へも展開したいですね。
キッズデザイン賞から広がる世界
Q:キッズデザイン賞に応募しようと思われたきっかけ、受賞後の変化などお聞かせください。
オクノテ清水:キッズデザイン賞は元々知っていました。「香の具」はもちろん大人も楽しめるところもありますが、小さい頃から香りに触れるのは、先々考えるとすごくいいことだと思っています。キッズデザイン賞に選ばれることはこの商品の拍付けになりますし、絶対相応しい商材だと思って応募しました。
GRASSE TOKYO藤井:きっかけは清水さんからお声がけしてもらって「こんなに素晴らしい賞があるんだ。やりましょう!」と二つ返事でした。色々な教育施設などに提案しに行き易くなったので、すごく大事な賞をいただいたなと思っています。
子どもの頃から本物の香りに
私たちも、実際に使用させていただきました!香りがとってもよく、絵の具を混ぜると色も香りも変わるのでまるで香水作りのようでした。身近な絵の具というアイテムで「これがユーカリっていう香りなんだ」「ゼラニウムってどのような植物なんだろう」と学びと本物の香りが子どもの頃から体験できるのが本当に羨ましく感じました。
■第15回キッズデザイン賞受賞作品
「香の具(kanogu)」