2026.1.6
経営者による意見交換会【受賞者による講演】
ユカイ工学株式会社 冨永 翼氏
事例紹介
~「妄想」から生まれる、人の心を動かすロボットづくり~
第19回キッズデザイン賞 審査員特別賞受賞
ユカイ工学株式会社 取締役 CMO 冨永 翼氏 講演レポート
第19回キッズデザイン賞審査員特別賞を受賞した「猫舌ふーふー」をはじめ、「甘噛みハムハム」など数々のユニークなロボットを世に送り出してきたユカイ工学株式会社。今回は取締役CMOの冨永翼氏より、プロダクト誕生の背景と、ユカイ工学ならではの発想法についてお話しいただきました。


冨永 翼 氏は2007年にタカラトミーへ入社後、営業職を経て新規企画部に異動。年間の大半をアイデア出しに費やす環境の中で、「1000個出して、3つが残る」という非常に厳しい企画プロセスを経験します。当時を振り返り、「数を出し続ける中で、アイデアにはある種の“方程式”があることに気づいた」と語りました。この経験が、後の「甘噛みハムハム」や「猫舌ふーふー」などのヒット商品につながっていきます。
ユカイ工学ではこの経験をもとに、「妄想」を起点としたものづくりを大切にしています。誰かのニーズを想像する“想像”ではなく、「自分が本当に欲しい」「これがあったら最高」という強い感情から生まれる“妄想”こそが、企画を前に進め、熱量を保ち続ける原動力になると説明しました。

その象徴的なプロダクトとして紹介されたのが「甘噛みハムハム」です。子どもの甘噛みを「痛気持ちいい」と感じながらも、子どもが実際に保育園とかでは相手を噛んでしまうかもしれないから注意をしなければいけない状況に。痛気持ちいいのに叱らないといけない…という<葛藤>が冨永氏自身に生まれました。この葛藤をなくそうと企画した甘噛みハムハムは、世界で7万匹以上を販売するヒット商品となりました。
また、第19回キッズデザイン賞を受賞し、2025年に発表された「猫舌ふーふー」についても触れ、日常に潜む小さな不便をユーモアと技術で解決する姿勢が、発売直後から大きな反響を呼んでいます。
「猫舌ふーふー」は、子どもが熱い食べ物を前にしたときに大人が自然と行う“フーフー”という行為をロボットが代わりに担ってくれるプロダクトです。冨永氏自身、子どもに熱いご飯を食べさせる際に「自分でフーフーするのは難しい」「大人がずっと付き添うのも大変」という日常の小さな課題を感じていたそうです。そこで「フーフーを自動でやってくれる存在があれば、子どもも楽しく、大人も助かるのではないか」という妄想から企画がスタートしました。
最初の企画書は、手描きのラフスケッチに「ずっとフーフーしてくれる」「もうフーフーする必要ないぜ」といった言葉が添えられ、非常にシンプルなものだったそう。しかし、この“妄想”に込められた熱量が社内外に伝わり、プロトタイプ制作、改良を経て、5年の歳月をかけて商品化に至りました。
猫舌ふーふーは、単に風を送るだけの装置ではなく、子どもが思わず笑ってしまうような可愛らしい動きや存在感があります。食事の時間を「面倒な時間」から「楽しい時間」に変えることを目指しており、まさにユカイ工学が掲げる“ロボティクスで世界をユカイに”を体現したプロダクトのひとつです。
発売後は1ヶ月で7000匹完売し、キッズデザイン賞審査員特別賞も受賞。子どもの安全性や使いやすさだけでなく、「家族のコミュニケーションを豊かにする」という観点が高く評価されています。冨永氏は「妄想から始まったアイデアが、5年後に多くの家庭で使われているのは本当に感慨深い」と語っています。
ユカイ工学では、毎週自由参加の「妄想会」を実施し、どんなアイデアも否定せずに出し合います。さらに年に一度、新製品を企画‧開発‧発表する社員合宿を開催し、必ずプロトタイプまで形にすることを徹底。触れて初めて伝わる価値を重視しているといいます。
ユーザーに愛されるプロダクトを開発する会社でいたいというので、僕らはやっぱりプロダクトを生み出してですね、それに興味を持ってくださった方々が幸せになったりとか、クスッと笑ってくれたりとか、そういったことを目指してやっております。
AI時代だからこそ、人間にしか生み出せない“妄想”を武器に、これからも多くの人に愛されるプロダクトを生み出し続けていく、そんな強い意志が感じられる講演となりました。
冨永様、貴重なお話をありがとうございました。
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ユカイ工学HP ユカイ工学
猫舌ふーふー受賞作品ページ 猫舌ふーふー | 審査委員長特別賞 | キッズデザイン賞検索サイト













