2026.1.7
経営者による意見交換会【ラウンドテーブル】
子どもの目線で社会をつくる キッズデザインの今とこれから
経営者による意見交換会第二部では、八木 啓太氏、冨永 翼氏、小川 凜一氏の三名を迎え、受賞作品の背景にある「妄想」や「熱量」、そしてこれからの子どもと社会のあり方について議論が行われました。

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ラウンドテーブル
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ビーサイズ株式会社 代表取締役 八木 啓太 氏
ユカイ工学株式会社 取締役 CMO 冨永 翼氏
LUCK株式会社 ディレクタープランナー 小川 凜一氏
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今の子ども、子育てをする親・大人が置かれている現在の環境についてどうお考えですか?
(八木氏)僕自身、10歳と8歳の息子がいて、彼らの環境と自分の子ども時代を比べると、世の中には二つの側面があると感じています。
一つは、確実に良くなっている側面です。法整備や安全性の向上、キッズデザイン賞のような取り組みで、安全が担保されたプロダクトが増えている。テクノロジーやデザインで環境が良くなっているのは、間違いなくいいことだと思います。
一方で、自然体験や、もっとプリミティブな体験が減っていることも気になります。過保護になりすぎることで、子どもが本来持っている原体験がスポイルされてしまわないか。その両立をどう考えるかは、日々悩んでいるところです。

(冨永氏) 今は「形がかわいい」「子どもにウケる」だけでは、もう評価されない時代ですよね。大事なのは、このモノが生み出す世界や、その先にある幸せや行動まで設計されているかどうか。 たとえば「猫舌ふーふー」は、子どもが自分でふーふーすることで、親が少し楽になったり、子どもが主体的に関われたりする。その体験全体がデザインだと思っています。
目や鼻をあえてつけなかったのも、いろんな食器や家庭に自然になじむため。好き嫌いが分かれないよう、あえて余白を残しています。
(小川氏)僕は、自発的にやりたいことを見つけられる子どもたちにとっては、ある意味最高の時代だと思っています。
小学生の頃、ゲームを作りたいと思っても、参考書は難しくて、教えてくれる大人もいなかった。でも今はAIがある。聞けば、すぐに答えてくれます。
実際、僕自身も今年、AIに教えてもらって、初めてゲーム作りをすることができました。そう考えると、何かを作りたい人にとっては追い風の時代です。
ただ一方で、「王道」がなくなってしまった難しさもあります。
「真面目でミスが少ない」という「いい子」の正解があった時代から、「それはAIに代替される」と叫ばれ、何が正解かわからない時代へ。その結果、挑戦する人と無気力になる人の二極化が進んでいると感じています。

「子どもと子育てに優しい社会」についてどう思いますか
子育てしている人に向けられる冷たい視線。子どもに対するまなざしを変えていくこと自体が、ソーシャルデザインなんじゃないかと感じています。
(冨永氏)僕は、親子が同じことを一緒にやることの大切さを感じています。
空手を息子と一緒に始めたのですが<言葉ではないコミュニケーション>が生まれました。親子で同じことをしたり、同じ感想や意見、たまには違ったことを同じ事柄で語り合えるのはすごく重要だなと思っております。
また、社会的な優しさという意味では、「初めての体験」を応援する空気が大事だと思っています。それを家の中だけでなく、社会でも受け止められる関係性があったらいいな、と。

(小川氏)最近、コンビニや薬局で子ども向けコーナーが減り、ペットコーナーが増えているのを見て、すごく象徴的だなと感じています。 子ども向けの本が売れないから減る。減るから、さらに子どもが本に触れなくなる。悪循環ですね。
教育の現場では、親や大人の価値観のアップデートが必要だと感じています。
イレギュラーな才能を「不安だから」と削ってしまわないこと。
今は、そのイレギュラーこそが追い風になる時代だという認識を、社会全体で共有していく必要があると思います。

社会に向けてできる「デザインの力」について教えてください
人が本来どうありたいかと、社会の歪みとの差分を見つけ、そこにプロダクトをはめていく。そのために、いつも妄想しながら企画しています。
(冨永氏)子どもたちの妄想こそが宝だと思っています。
それを爆発させ、受け止める場や社会を設計すること。 ロボコンのように、「好き」を突き詰められる場所をデザインすることが、何より大事だと思います。
(小川氏)僕にとってのデザインは「入り口」です。法律でも、ビジネスでも、「これ、面白そう」と思える入口を作ること。入口さえあれば、子どもはどこまでも進んでいく。
だからこそ、名前の付け方や見せ方も含めて、入口のデザインにこだわっています。

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今年の経営者による意見交換会は受賞者3名の方にお越しいただきました。
三氏の話から見えてきたのは、子どもを取り巻く環境が便利になる一方で、自然の中で遊ぶ機会や「これが正解」という道筋が減り、子どもも大人も新たな課題を抱えている現状でした。だからこそ、親子が一緒に挑戦したり、社会全体で子どもの「初めて」を応援したりする空気が大切だと語られ、子どもの好奇心をきっかけに、子どもが「やってみたい」と思える入口をつくることが、これからのデザインの役割だとも示されました。子どもの多様な才能が自然に伸びていく社会をどう形づくるか、そのヒントが詰まった議論でした。
素敵なお話をたくさんお伺いできました。誠にありがとうございました。

文章:池尻 浩子












