2021.12.1

つくって、あそんで、ひらめいて。音楽で遊べる「ピコトンズ」(前編)

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音楽は、“上手い”人だけのものではありません。

音程が合っていなくても、リズムがズレていても、誰もが音楽を楽しんでいいし、“上手い”人もレベルに合わせて難しいものにチャレンジしていい。振り返れば、子どもの頃はみんなそんな風に、音楽を自由に楽しんでいたように思います。

ロボットトイ「toio™(トイオ)」 専用タイトル「おんがくであそぼう ピコトンズ™」 は、子どもも大人も、音楽を自由に楽しむことができる 新しい製品です。

プロデューサーの中山哲法さん (株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に、開発のきっかけやコンセプト、これからの展望についてインタビューしました。

ピコトンズって何?

中山さんはプロデューサーであり、ご自身でも演奏を楽しんでいます。小学生の頃から、ギターを弾き、音楽に触れてきたそう。「ピコトンズ」を使って、演奏してもらいました。

ピコトンズの特徴を教えてください。

「ピコトンズ」は、遊びながらいろんな音を出し、演奏し、作曲までできるところがポイントの製品です。

付属の絵本を使って音を鳴らしていくと、基本的には遊んでいるだけのように感じるのですが、実は音楽の3大要素であるリズム、メロディー、ハーモニーが順番に理解できるようなステップになっています。小さなお子さんでも、例えばカエルにタッチするとカエルが鳴く、犬にタッチすると犬が吠えるというわかりやすい「音色」から、ちょっとスライドさせると音の高さが変わる、キューブを2個同時に使うとハモっているように聞こえる、というような音楽の仕組みまで楽しみながら学べます。

ピアノのレッスンで習うような楽譜はあまり出てこなくて、あくまでもキャラクターと遊んでいるだけで音楽の基礎が身につくように作っています。カートリッジは製品に2つ入っていて、その1つが「プレイブック編」です。このカートリッジは、最終的に作曲や演奏が簡単にできるように絵本でフォローしていく内容になっています。読み進むにつれてだんだん高度になっていって、「C」「Dm」などのコード が鳴らせたり、自分で作曲ができたり、ボーカロイド™*1 みたいに歌詞を作ることができたりするようになります。

プレイブック上でコードを使って演奏するあそび

もうひとつのカートリッジが「えんそう編」です。専用の紙製マットを使って、さまざまな楽器で演奏をすることができます。パソコンで編曲するときと似たようなUI(ユーザー・インターフェース)にしており、通常の楽器を使っての作曲だけでなく、信号機の音や車の音を鳴らして曲の中で使えたりもします。

子どもたちが作曲した曲は、どのように聴くことができますか?

録音して「toio」本体で聴くのはもちろんのこと、スマホやパソコンへ高音質で書き出して聴くこともできます。また、実際にお子さんが作った曲のなかには、音楽配信サービスのSpotify*2 に上がっていて、オンラインで聴くことができる曲もあります。段階を踏んで、作曲という体験を一通りやってくれたのかなと思っています。

「クールにおんがくであそぼう」を演奏する中山さん

ただ、みんなが作曲まで到達することを目標とはしていません。特にお子さんは個人差が大きくて、何にもわからない子からピアノを弾ける子までいますよね。どのレベルのお子さんでも、何か楽しさや学びがあるものにしようと考えてデザインしました。最初の方は、音楽というよりも「押したらなんか鳴る」という音色に触れる楽しさがあります。どのタイミングで離脱しても学びがあるような作りは、工夫したところですね。

音楽とものづくり、デジタルとアナログを掛け合わせる

開発のきっかけを教えてください。

僕は、もともとこの「ピコトンズ」を遊ぶためのプラットフォームである「toio」という製品を作ったときのファウンダーのひとりです。今までいろんなタイトルを作ってきましたが、3人のファウンダーのみんなが楽器をやっていて、音楽はいつかやりたいね、と話をしていたんです。

そんななかで、音楽教育系のお仕事で実績をお持ちの、有限会社キッチンの皆様や作曲家の烏田晴奈さんとの出会いがあって、「このメンバーで音楽のタイトルを作ろう」と、動き始めました。

中山さんは音楽やものづくりとどのように触れ合ってきましたか?

僕はピアノなどの楽器を習っていたわけでもなく、いまも楽譜を読むのに苦労しているくらいです。ただ、小学5年生のときに映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て、そこで演奏されているギターを見てかっこいいなと思ったのがきっかけで、それから大学まではずっとギターを弾いていました。最近では、デジタルな楽器も好きで、「ピコトンズ」を作る前には、指でボタンを押すとドラムの音が鳴るフィンガードラムを買って、それで遊んでいましたね。

それから、子どもの頃は家にあるもので工作するのが好きで、トイレットペーパーの芯やラップの芯を使っていろんなものを工作したり塗ったり、楽器で言うとティッシュペーパーに輪ゴムをつけてギターを作ったり、そんな遊びをすることは多かったと思います。

デジタルのプロダクトが増えているなかで、あえて手で遊べるおもちゃを作ったのはなぜですか?

僕のキャリアはもともと、ソフトウェアエンジニアなんです。だから、デジタルを触ることに対しての利点はよく知っています。加えて、昔からアナログな工作やものづくりも好きだったので、デジタルとアナログの両方を掛け合わせたいなという思いがありました。

ここ数年では、デジタル世界の中にアナログの要素を持ってくるものが多かったと思うんですよね。例えばVR(バーチャル・リアリティ)も、デジタルの中に画像を取り込んでアナログのように見せますし、もちろんビデオゲームもアナログを再現するようなかたちに寄っていきます。一方で、デジタルの要素、たとえばゲームのルールや演算の結果をアナログの世界に持ってきたものはあんまりないなと思っていました。

手触りができるのがアナログ世界の良いところなので、その利点を生かしつつ、今まで画面の中のデジタルでしかできなかった体験をアナログ側に持ってくることを発想しました。例えば、画面の中でブロックを自由に組み立てるのも楽しいですが、僕たちには手や体という最高のUI(ユーザー・インターフェース)があるので、より気軽に楽しめますよね。

後編に続きます。

*1:「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
*2: Spotifyは、世界中のクリエイターによる数千万もの音楽やポッドキャスト、ビデオを楽しめるデジタル配信サービスです。(「SPOTIFY」はSpotify ABの商標)
【キッズデザイン賞】
おんがくであそぼう ピコトンズ™

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