2021.12.15

つくって、あそんで、ひらめいて。音楽で遊べる「ピコトンズ」(後編)

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前編からの続きです。

キャラクターが非常にかわいらしく、印象的に残ります。

実は、この「ピコトンズ」の「Aくん」というキャラクターのモデルは僕です(笑)。

プレイブックは「このキャラと一緒に音楽を学んでいこう」という流れになっていて、子どもたちと一緒で音楽の初心者という設定です。一緒に音楽を遊びながら学んでいくキャラクターですね。

あと、コンソールに装着するキャラクターである「Mr.(ミスター)コンソール」にもこだわりがあって、ソニーが1988年から発売したお子さん向けの「my first Sony(マイ・ファースト・ソニー)」シリーズのラジカセと同じ配色にして、ソニーらしさを出しています。

このMr.コンソールが、80年代から音楽に精通しているラジカセのおじさんという設定で、楽しくお喋りながら音楽についていろんなことを教えてくれる案内役になっています。 キャラクターをとりつけるモバイルロボット「toio™コア キューブ」は、プラットフォームである「toio」を作るときにデザインしたもので、お子さんでも手に持てるサイズを意識して作っています。「ピコトンズ」でキューブを2個使うのも、最初から決めていました。一個充電しながら一個使うことも当然できますが、やはり両手で演奏できるようにしたいと。それと、お友達やお家の人と一緒にやることも大切にしているので、紙のマットも全部2枚ずつついているんですね。「お父さんはボイスやってよ、わたしはこっち弾くから」みたいなこともできるようになっていて、合奏するのも、音楽でコミュニケーションをとるいい機会だと考えています。

子どもたちも開発者。ともに作った「ピコトンズ」

デザインのプロセスで大切にしていたのはどんなところですか?

これは「toio」の開発全体に言えることですが、子どもたちと一緒に作っていくことを大切にしています。

最初に「toio」を作ったときには、プロトタイプを200人以上の子どもたちに試してもらいました。はじめは、1分ぐらいでもう他のおもちゃで遊んじゃって、こっちには見向きもしないといったことも起きたので、子どもたちの反応を見て、どこが楽しいのか、どこが嫌なのかということを細かく検証して改善していくループを作ると、どこかのタイミングで楽しくなって離れなくなるんですよね。

「ピコトンズ」でも同じように、数名のお子さんたちに最初のプロトタイプから一緒に検証をしてもらいました。 その中でずっと没頭して楽しくやってくれたのは、プレイブック冒頭の最初の音色を鳴らすとか、声で遊ぶとか、この辺で徐々に音楽、音に対しての恐怖感をなくしていけたからだという気づきを得ました。そして、いったん恐怖感を取り除けたら、少し難しくなっても「ああ、さっきのね」という感じで遊んでくれるので、とにかくプレイブックの冒頭で楽しくテンションを上げていくことを目指して企画開発してきました。

開発終盤のユーザーテストの様子

僕らからしたら、子どもたちも開発者なんですよね。一緒に開発してくれるメンバーとして、観察をしつつ、とにかく子どもたちを含めたインクルーシブデザインを目指しました。「ピコトンズ」では、プロトタイプの段階から「ねているおじさん」の音色「おなら」を連打している子がいて、それを使って作曲して「おなら」の音楽を作っている子もいました。それを見ただけでもう、「これには価値があるんだ」と直感しました。子どもたちは正直なので、「つまんない」と言われる覚悟もしていたのですが、初回からみんな大爆笑してくれていて、「これはいける」と感じた記憶があります。

また、ちょうど小学4年生ぐらいのお姉ちゃんがついてきていて、たぶんピアノを習っているんでしょうね。そこで、ハモらせたりスケールをいじったりしながら弾いて遊んでくれたのを見たときに、「ああ、いろんな楽しみ方をしてくれるんだな」と。子どもたちがそんな風に自然に遊んでくれたのが、僕としてはガッツボーズが出たところでしたね。

ものづくりの仲間を増やしたい

これからに向けた思いを教えてください。

「ピコトンズ」を含め、「toio」の「つくって、あそんで、ひらめいて」というコンセプトは、当初から同じです。このプラットフォームのファウンダーとして、このコンセプトに合ったタイトルをつくり、可能性を広げていきたいと思っています。

また、個人としては、自分と同じ「ものづくり」の仲間を増やしたいと思っています。子どもも大人も等しく、何かを作り上げるステップは楽しいんだ、と感じてもらいたいです。

ピコトンズ開発発表時の写真。中山さん(左)、「ピコトンズ」クリエイティブディレクター 有限会社キッチン 横田将士さん(右)

子どもたちをものづくりの仲間に引き込むのは、実は難しいことです。大人は説明すれば理解しようとしてくれますが、子どもたちは正直なので。まなびのステップを刻んだり、デジタルでのサポートをしたり、自由度や余白を確保したりといった工夫をすることで、音楽や工作などの新しい現実世界のものづくり体験を提供して、仲間を増やしていきたいですね。

ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを始めた中山さんですが、子どもの頃から音楽や工作に触れ、いろんな物事を楽しんできたことを伺えました。何よりも、演奏されているときの楽しんでいる様子が印象的で、ご自身が音楽やものづくりを心から楽しんでいるからこそ、「ピコトンズ」の楽しい世界を追求できるのだと感じます。

“上手い”人だけではなく、あらゆる人が楽しめる音楽のあり方に触れたら、きっと懐かしさを覚える人もいるのではないでしょうか。子どもから大人まで、どんな世代の人も楽しめる「ピコトンズ」を、ぜひ楽しんでみてください!

【キッズデザイン賞】
おんがくであそぼう ピコトンズ™

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