2023.10.5

「これからのアウトリーチを考える」 〜ダンスカンパニー”んまつ〜ポス”研修プログラム〜レポート【後編】

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2部:100聞は一見にしかずワーク

前編から続きます。

2部は、んまつーポスの豊福彬文さん、みのわそうへいさんによるワークショップ。
参加者の方々が自身を通して、体や心がどのような反応をして変化するのかを体験していただきました。

体を動かすことは心を動かす

今回のワークは自分が「スパイ」になりきり、与えられたミッションを身体で表現しながらクリアしていくもの。これは、んまつーポスが国内外の小学校などで開催している大人気のワーク!

子どもたちが自由に表現が生まれてくるような「課題」を設定し、一つの作品を作っているそうです。

「基本」となる、動いて止まる、集まったり離れたり、縮む・伸びるというような動きを入れながら「走って逃げる」「障害物を飛び越える」「赤外線を避けながらすすむ」などの「課題」(ミッション)をクリアしていきます。
また、応用編では、これをベースにグループで話し合い、砂漠や宇宙など、シチュエーションや侵入先、障害物、最終的な達成をどこにおくかなど、コミュニケーションをとって一つのものを作ることをしていきました。

「誰かから動かされるのではなく、1人で動くところがポイントです。自分の意志で一歩踏み出しているという確実なものが必ずあると思います。
このワークショップには、ミッションが1回だけではなく、何回もチャンスがある。 あの時、うまくいかなくても、次はこうしようが生まれるんです。 よくダンスというと、恥ずかしさを捨てろ、馬鹿になれなんて言われたりしますが、実はダンスはこれだけ頭を使って動くものなんです」(豊福さん)

んまつーポスダンスから
プログラム①「い・ろ・は・す」
デザイン:高橋るみ子&んまつーポス

んまつーポスダンスから
プログラム②「熱い国から来たスパイ」
デザイン:高橋るみ子&んまつーポス

最後は、質疑応答に加え感想などを共有し終了となりました。
参加者からは
「今回ワークショップに申し込んだのはいいけど、自分にダンスができる気がしていなかった。1人だけ取り出されたら恥ずかしいと思っていた。ただ、実際に参加してみて 集団で動くけど「自分」もあるというのが、恥ずかしさも感じずにできました」
「今まで、子どもたちに関わりながらも、自分自身はあまり動けていなかったんです。 今回、自分も動いてみると楽しさが感じられて、それを子どもたちに伝えていきたいと思いました」
「本日行ったワークショップの内容なら、運動が嫌いな子供も充分楽しめますし、運動が好き になるのではないかなと肌で感じられました。約100 個あるとお聞きした他のワークショップの内容にも興味があります」
「イメージを持つことで、身体が自分の思いもよらない感じで動いていく感覚がすごく楽しかった!色々なスイッチを押してもらえた気がしました」
と感想が上がっていました。

んまつーポスでは、ミッションをクリアしたら、いつの間にかダンスを踊っていたとなるので、「気づいたらほらダンスシリーズ」と呼んでいるらしいです。

その中で、こんな言葉が印象的でした。
「”体は感情を隠し持っている”という言葉があります。身体を動かすというのは心を動かすということなのだと思う」(るみ子先生)

編集後記

教育でもないアートでもない、そんな中間地点にあるような、日本人が苦手とする「答えのない世界」を、いかに楽しく、そして「自分の感性」をそのまま受け入れてもらえるような時間だと感じました。
子どもたちだけではなく、大人が体現することで気付かされることも多いのではないでしょうか?私も小学生の子をもつ母としても、日本の教育現場を少し垣間見れたことにより自分ごととして感じることもできました。そして、私にとっては身近ではなかったダンスがより身近になり個性の可能性を広げるものだと感じました。

子どもとアートが近づく機会が、これからも増えるといいなと願います。

キッズデザイン賞マーク
文章:池尻 浩子