2022.2.3

体験型クリエイティブミュージアム「AkeruE」見学レポート ~子どもはみんながアーティスト~

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駅舎を出ると、そこは見晴らしのよい有明の空

東京都の国際展示場前駅・有明駅から徒歩数分にある、パナソニックセンター東京。
その中にある「AkeruE」は、パナソニックが企画・運営する、『ひらめき』をカタチにする体験型のクリエイティブミュージアムです。
STEAM教育(※1)に合わせた展示をそなえ、自分で表現することの大切さや面白さを学べる先進的なミュージアムとして、今年の第15回キッズデザイン賞を受賞しているとのこと。今回はその体験レポートをお送りします。
潜入取材ということで、子ども心を思い出しながら楽しみたいと思います…!

AkeruEは小さいお子さんから大人まで楽しめる施設ということで、お子さんにも参加いただきました。
同行してくれた小学4年生のユウトくん(仮名)と3年生のリナちゃん(仮名)は、互いに初対面。知らない大人にも囲まれ、少し緊張しているみたい。
AkeruEで遊び、帰る時に二人のどんな顔が見られるのでしょうか。自然な笑顔が見れたらいいなあ。

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AkeruEエントランスに並ぶユウトくんとリナちゃん

それでは、早速中に入ってみましょう。

AkeruEの仕掛けが二人の心を動かし始める

今回ツアーの案内をしてくださったのは、パナソニックの寺岡さん。
ユウトくんとリナちゃんに話しかける寺岡さんは、子どもに接するというより友人の友人に会ったかのようにフランクで、その姿が印象的でした。

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AkeruEは2階と3階に3つずつ、合計6つのエリアに大きく分かれています。

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アップサイクル(※1)されている跳び箱の椅子や大太鼓や樽の植木鉢が並ぶエントランスを進むと

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    植木鉢へ変身した大太鼓

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    椅子として活用されている跳び箱

GAIA(ガイア)というエリアには、球状の棚に金魚の水槽と植物の鉢が並んだ、Aquaponics(アクアポニックス)と呼ばれるオブジェが置かれています。ここでは、水、植物、魚が相互に影響し合いながら循環する、エコシステムに直に触れることができます。

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作品の周囲にあるプレートに書かれている内容は、子どもには難しいのではないかと思い、「普段はスタッフの方が館内にいて、子どもの質問に答えられるようになっているんですか?」と尋ねると、「私たちもすぐ声をかけたり、すぐに答えを教えるのではなくて、子どもたち自身に自分なりの考えをもってもらえるように、できるだけ質問をしながら会話するよう心がけていますね。」(寺岡さん)

いざ、ワークショップにチャレンジ!そこで待っていたのは…?

次のTECHNITO(テクニート)のエリアでは、3Dプリンターを利用したコマ制作のワークショップを体験しました。 講師を務めてくださったのは、棚橋さん。
最初に、3Dモデリングソフトを使ってコマの設計をします。コマの本体にあたる図形は好きな形(♡、☆、△、♢など)から選べます。
それから、自分の作りたいコマの形に合わせて、先生の説明を聞きながら操作を進めていきます。

体験型クリエイティブミュージアム「AkeruE」見学レポート

自分の”好き”を真っすぐカタチにしようとする真剣さが、ワークによって引き出されるのを垣間見た気がしました。

その後、パソコンで設計したコマのデータは3Dプリンターへと送られ、すぐにプリントが始まりました。
素材として使う線状のプラスチックが熱で溶かされてソフトクリームのようになって、設計したコマの形に合わせて層状に積み重なっていきます。

その様子を見る二人の表情は、新鮮な驚きに溢れていました。

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「作ってみる?」「うん、作る!!」アーティストとしての本領が発揮される

その後3階に移り、テクノロジーを使ったアート作品が展示されるASTRO(アストロ)エリアを観覧。
ここには、科学や技術とアートを芸術をかけ合わせたアート作品と、作品の仕組みを分解して説明する原理展示があります。

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    白いスライムに興味深々な二人

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ユウトくんは他のアート作品や展示も夢中になって見つめていました。




次に、COSMOS(コスモス)エリアで作品づくりに挑戦。

体験型クリエイティブミュージアム「AkeruE」見学レポート

ここは、掲げられたテーマに答える作品をそれぞれが自由に作り、つくられた作品たちが回転する台の上に集められて一つの宇宙(コスモス)をなす、というエリアになっています。現在のテーマは「誰かをハッピーにする未来の商品をつくってみよう」。

体験型クリエイティブミュージアム「AkeruE」見学レポート

COSMOSで作品をつくるリナちゃん

私が「まず”誰を”から考えようかな」などと悩んでいる間に、もうリナちゃんは駆け出し、たくさんある素材の中から使うものを選び始めていました。
あっという間に、頭の中のイメージをカタチにしたリナちゃん。
作品完成後、「街のみんなを幸せにしようと思って、大好きな温泉を作りました。あとは、家族でいったキャンプも楽しかったので、これはその時のテントです。」と説明してくれました。

子どもにはあふれんばかりのイメージの宝庫があるんだなと思いました。
COSMOSは子どもが自分の想いを素直に表現できる場所なのかもしれません。

インプットとアウトプットが繋がった、AkeruEという場所のマジック

今回館内をツアーしてみて、AkeruEはインプットとアウトプットがシームレスに繋がっている空間だという印象が強く残りました。
しかもここでの「インプット」は、情報や知識のことではなく、興味や疑問、刺激といったものです。
アート作品に触れる。不思議な現象(アート作品の構成要素についての展示)を目の当たりにする。他の子、他の人の作品を見る。
そこで高められた感性や表現欲求は、TECHNOTOのワークショップやCOSMOSの工作、PHOTON(フォトン。今回は体験なし)の動画制作といった場所を与えられることで存分に発揮される。
それ以外にも、手を光にかざすと開く扉、みんなで書いてつくる言葉辞典など、あちこちで子どもは”受け取ったり”、”表現したり”を行き来できるようになっていました。

寺岡さんが今回のツアーで一番楽しかったことを聞くと、
(ユウトくん)「3Dプリンターのコマ作りかな。」
(リナちゃん)「COSMOSで作品をつくったこと!」とのこと。

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でき上がったコマを何度も何度も回してイメージとのずれを確認するユウトくんはものづくりに取り組む小さな職人、頭の中に浮かんだイメージを次々と具体的な形にしていくリナちゃんは、天真爛漫なアーティストを思わせます。
この、子どもが本来もっている力を存分に発揮できるのが、AkeruEという場所のマジックなのだと感じました。
実際、滞在は2時間強に及びましたが、エネルギーを発散した二人の顔は、来た時よりもむしろ生き生きとした笑顔に満ちていました。

体験型クリエイティブミュージアム「AkeruE」見学レポート

みなさんも是非、AkeruEを体験してみてください!

注解:
※1:STEAM教育。Science(科学)、Technology(技術)、Enginieering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの頭文字を組み合わせた教育概念。数理的思考力を重視した従来のSTEM教育に、AIでは難しい創造力を伸ばすためのArtが追加された分野横断型の手法。

※2:捨てられるはずの廃棄物や不用品に、デザインやアイデアといった付加価値を新たに持たせることにより、別の製品としてアップグレードして生まれ変わらせること。サステナブルなものづくりの方法論として、ファッションや家具など、様々な業界で注目されている。
キッズデザイン賞マーク