2025.1.23

経営者による意見交換会【受賞作品事例紹介】あそび大学
~子どもの主体的な遊び・学び・行動を考える~

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経営者による意見交換会事例紹介

第18回キッズデザイン賞 内閣総理大臣賞受賞
特定非営利活動法人あそび研究会理事 關 博旨様・あそび研究会理事 中山 勇魚様

あそび大学とは
NPOあそび研究会が主催となり、創造性をはぐくむ遊び場を無償で開放し、子どもたちが自分の意思であそべる場にアクセスできることを目指す場所。2021年12月、千葉大学墨田サテライトキャンパスにて「あそび大学」をスタート。以来毎月1 回のペースで開催し、今では毎回100名以上の参加申込がある。
あそび大学HP

關 博旨様
住宅設備機器メーカー勤務を経てSeki Design Lab.を設立。
2021年まで無印良品のデザイナー及びディレクターを務める。
自身の子育てを通じて子どもたちの置かれている状況に危機感を感じ、子どもたちが夢中になれる場作りを自治体との協働で始める。

中山 勇魚様
早稲田大学教育学部を卒業後、日本放課後学会副会長、東京都学童保育協会副会長等を歴任。
学生時代から学童保育の現場支援員として卒業後は保育系の企業で勤務。
その後「子どもたちのための学童保育」CFAKidsを開校。
とことん子どもたちと向き合う姿勢が共感を呼び、駄菓子屋irodoriをはじめとした多様な居場所やあそび場を運営している。

子どもたちを取り巻く課題

今の子どもたちの抱える課題
✔️小学校でいじめが激増 20年で30倍になっている
  令和元年は48万件、昨年度は70万件にのぼる
  自殺や刑事事件、校内暴力等も激増している

✔️日本の身体的健康度は世界の中でも1位だが
  精神的な幸福度は先進38か国中37位

社会と放課後の変化


要因は小学生の放課後の変化にあると言う中山氏。
「昔はチャイムが鳴った瞬間、皆すぐ友達と遊びに行ったり本を読んだり好きなことをして過ごしていました。今の子どもたちの放課後は塾に行ったり、地方の子はスクールバスでの移動、帰宅してからはYouTubeを見たりゲームやるという状況なんです」

千葉大学の研究(日本全国の子どもたちへのアンケート)によると、80%の子どもが平日に一度も外遊びできてない。

文部科学省も「子どもたちの幸福度や自己肯定感の向上には遊びが大事」、特に子ども時代に「異年齢の友達や家族以外の大人と遊んだことが多ければ多いほど、自己肯定感が高まる」と提唱している。

なぜ、遊びが大切なのか

「遊びとは自己責任。楽しむために何をやるかも自分で決められる。これが一番重要なこと」だと中山氏は言う。

今の小学生は、学校では学校の先生、家ではお父さんお母さん、放課後は学童や習い事や塾、ほとんど大人と過ごしている。子どもだけで自由に過ごしている子は2割ほどの現状。

大人の中にいると失敗する機会さえ少なくなるが、遊びの中では子どもたちは自由だ。喧嘩して嫌な思いをしても仲直りの方法も自分で決める、嫌なことがあっても乗り越えるのは自分自身。

逆に大人の言う通りにしていると、すぐ諦めたり、立ち直れなかったり、社会に通用しない子どもを育てることになる。

「遊びとは、楽しいものを子どもに与えてあげることではなく、子どもたちが自分自身の置かれた環境で楽しむ力を身につけることだと思う」と中山氏は伝える。

だからこそ、子ども時代に自由に遊ぶことができる時間・空間・仲間の環境作りをしている。


あそび大学のたった1つのルールは「自分自身やお友達を傷つけない」
親も口出し禁止。喧嘩しても、大人が仲裁することはしない。
子どもが自分の意思で主体的に遊べる環境と企画を用意している。

事例①:けんかの大学
   喧嘩をした時はどうしたらいいかを子どもたち同士で考えて解決してもらう

事例②:こどもの国(なつのあそび大学)
   夏休みの特別仕様。子どもたちが自分で考えて仕事を作り、お金を稼ぎ、税金や土地代まで納めることを体験する

事例③:こどもの国の議員
   子どもが議会を開き、意見や相談事を受けて対応策を考え実施し、改選の選挙もする

子どもが夢中になれる環境作り

自然は子どもの最高の遊び道具だと思っている。ただ、都会の子どもたちにはそこに触れる機会が少ない。そこで、あそび場のホームグラウンドである墨田区には2000以上の町工場があることに着目して、工場にある、布、紙、革、プラスチックなど様々な素材を生かして遊んでいる。

「何かを意図して作られていない素材はどんな遊びにもなる可能性を秘めているものだと、子どもたちを通していつも気づかされる」と關氏は語る。

あそび大学はどんな子でも遊びに来てもらえるように無料で開催している。子どもが主体的にやりたいことをやれて、良いこともちょっと悪いことも失敗も成功も味わい尽くせる。あそび大学が目指すのは、そんな遊びの環境だ。
キッズデザイン賞マーク
文章:池尻 浩子