2024.3.10

【経営者による意見交換会】「子どもたちが自分で考え、行動するチカラ」ラウンドテーブルレポート

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【ラウンドテーブル】
「子どもたちが自分で考え、行動するチカラ」

左より
高橋義則氏(モデレーター)
清木昌氏
太田可奈氏
池田一彦氏

〈高橋〉 近年、子どもが自分の力で未来を切り開く取組みがキッズデザイン賞で増えています。子どもが自分の力で行動するために、大人や産業界、社会は何をすべきでしょうか。

〈太田〉 学校の勉強が社会でどう使えるのか、どう繋がるのかが分かれば、子どもたちは社会に出る怖さや、働きたくない気持ちを払拭できるのではないでしょうか。
ネット上にはネガティブな情報も溢れています。「FIREしたい」という言葉だけは知っていて、「どうしたらFIREできるか」「どうしたらいいのか」を考えられるような環境を整えることは大事です。親は自分が知らないことだと子どもに蓋をしてしまうこともあります。橋渡ししてあげられる大人がたくさんいるといいのかな、と思います。

〈池田〉 自ら考えて行動する力は子どもたちが元々持っていて、その力を大人が邪魔しているのではないかと思っています。子どもの力を信じていない大人が世の中には多く、そうした大人に触れ合うたびに、子どもは考えることをやめたり、行動したいのに諦めたりしていくのではないでしょうか。
大人のマインドチェンジが必要だと思っています。

〈清木〉 我々「ほぼ日」はコンテンツを企画・制作して提供する立場です。そのコンテンツをどうするかは、受け取る側の子どものモチベーション次第です。
「ほぼ日のアースボール」から知識を吸収するのは、内容としては地理の勉強と同じかもしれませんが、インタラクティブでいろいろな発見がある場をセッティングしてあげると、それだけで好奇心が生まれる。子どもの好奇心を刺激する教材や場をいかに設定するのかが大事ではないでしょうか。

〈高橋〉 子どもたちを取り巻く学びや人とのコミュニケーション環境が変化しており、地域とコミュニティの役割は脆弱化していると感じています。今の子どもや子育てに関して、足りないことや課題、やるべきことの有無とあるとすればどこが課題だと思いますか。

〈太田〉 民官学の連携ですね。民間は普通の授業にタッチできませんが、最近増えてきた探求の授業などには関わることができます。先生の負担を増やさずに地域でどれだけカバーできるか。地域をフィールドワークとして、学校を飛び出していろいろな授業ができるはずですが、予算が少ないのが現状です。国は教育部分にもっと予算をかけてもいいのではないかと思っています。
私たちは教育委員会の依頼で、企業とのコラボ授業をセッティングしています。創業社長や経営者は、その地域が自分たちのベースだという想いを持っていて、地元に還元していきたいという想いも強い。ITを活用した出前授業を一緒に作っていくのが大切な気がします。

〈池田〉 地域の大人との関わりが重要だと思っています。子どもはある意味、学校や塾という世界に隔離されています。地域にいる面白い大人と繋がって、リアルな社会、地域に参加する機会が必要ではないでしょうか。 こども選挙では社会活動や大人と関わる機会を作りました。子どもは大人に興味が湧くし、社会にも興味が湧き、主体性が生まれてくるのではないでしょうか。
子どもと一緒に何かをしたら面白そうだというのが根底にあります。大人が子どもに教えるのではなく、子どもと一緒に、同じ目線で社会課題に向かっていくとリアルな学びがある気がします。


〈清木〉 子どもたちはインターネットで得た断片的な情報を、感情的に即座に判断することに慣れていて、その情報を組み立て直して俯瞰的な視点で判断する力は訓練しないと得られないと思っています。「ほぼ日のアースボール」は、この地球上に暮らす人類や自然や環境の素晴らしさ、世界の問題を俯瞰して見ることができます。国境すら人間が引いた線にしか過ぎないということがわかります。自分とは繋がらないと思っている情報でも、マクロ的な別の視点から見ると繋がるかもしれない。情報の使い方が変わってくるのではないでしょうか。
ミクロ的な地に足がついた視点と、マクロ的な俯瞰した視点の両方を持つことは重要です。

〈高橋〉 ミニ・ミュンヘンのような取組みを日本でも始めている自治体や団体もありますが、子どもたちの主体性を育むにはどんなサポートが必要でしょうか。また、キッズデザインの考え方を地域や企業、社会全体に広げていくために、今後、どのようなアクションを起こしたらいいと思いますか。

〈太田〉 SNSの強化は必要でしょう。例えば、学生にアンバサダーや顧問になってもらい、学生目線でSNSを発信してもらう。若い力を取り入れるという視点を持つと良いのではないでしょうか。
私は渋谷新聞と原宿表参道新聞をいう学生が編集長のローカルメディアを運営しています。学生が取材にいくと、対応する大人も活性化されます。アントレキッズでは、オウンドメディアをやっているし、V Tuberで収益化している生徒もいます。
協議会の会員企業が新規事業を立ち上げる際に、子どもたちに参画してもらうのも一つの方法ではないでしょうか。企画会議に子どもたちを入れるだけでも面白いと思います。その子たちがSNSで発信することによって若い世代にキッズデザイン協議会が広まると、会員企業に就職したいと考える学生も出てくるかもしれません。

〈池田〉 実はキッズデザイン賞授賞式に子どもたちを登壇させたかったのです。子どもたちも、自分たちがやったプロジェクトだと思っているので。
登壇するだけでなく、審査員側に子どもがいてもいいのではないかと思いました。子どもと一緒に考えることは、キッズデザインの本丸ではないでしょうか。

〈清木〉 私もキッズデザイン賞の授賞式で、「あ、子どもがいないんだ」と思いました。「子どものため」というのであれば、何らかの形で子どもが関わって然るべきではないでしょうか。
感性・創造性を豊かにするミッションがあるならば、固い雰囲気を払拭してさまざまな業種・業態の人が入りやすい空気をデザインするのもいいのではないでしょうか。
弊社の社是に「夢に手足を。」というのがあります。夢を見るだけでなく行動を伴うと、夢が行動に影響され行動が夢に影響されて広がっていく。子どもに対していいことをした結果、社会はこうなる、というビジョンで接点を持つと多くの共感を得られると思います。

〈高橋〉 最後に、今後のテーマや抱負を。

〈太田〉 公教育にアントレナーシップ教育やキャリア教育を組み込みたいと考えています。学校にはインフラが必ずあるため、企業とのコラボでカリキュラムの開発をしています。ITで全小学校が第一産業をはじめとするその地域・場所を学べるものを構築していきたいですね。

〈池田〉 こども選挙に関わった子どもたちはニュースを見る視点も変化していて、政治家に失望する子どももいて、個人的には民主主義の危機を感じています。こども選挙というのは、子どもの純粋な目で選ぶツールです。本当に全国に広がってほしい。
いつか、憲法改正等で国民投票が行われるとしたら、全国のこども選挙実行委員が結集して、全国こども選挙を実施し、数千、数万ものこども票を国政に届けることができたらと考えます。子どもが意見を表明する機会、社会に参加する機会も生まれる ―― そんな夢を持っています。

〈清木〉 世界中でさまざまな紛争があるが、「地球は一つ」という事実が実感できるのがアースボールです。国内で18万個以上売れていますが、「知らなかったけど、これいいね」と評価してくれる人も多いポテンシャルの高い商品。一緒に取組みたいという方がいればぜひ、声をかけてください。
キッズデザイン賞マーク