2025.5.23
インクルーシブ・キッズデザイン 体験レポート
OTDワークショップ(組織変革のためのダイバーシティ・ワークショップ)

キッズデザイン協議会の調査研究事業インクルーシブ・キッズデザインプロジェクトの活動として、プロジェクトメンバーに加え会員企業の社員にもお集まりいただき、OTDワークショップを開催しました。
OTD:Org. Transformation by Diversity の略
<OTDワークショップ開催概要>
タイトル:インクルーシブなマインドを作ろう~多様性を力に変えるために~
日程:2025年3月24日(月)13時~16時
場所:フレーベル館
参加:6社1団体から25名
安藤ハザマ、フレーベル館、ADKマーケティング・ソリューションズ、ADKホールディングス、LIXIL住宅研究所、セコム、キッズデザイン協議会
※OTDワークショップの詳細はこちらへ→
ファシリテーター:中村奈津枝さん(OTDワークショップ運営委員)
東京大学 教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センター 特任研究員
株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)主任研究員
特定非営利活動法人キッズデザイン協議会 フェロー
2019年までIT企業にて組織のダイバーシティインクルージョン、ICTのユニバーサルデザインを推進。
同年よりバリアフリー教育開発研究センター所属。ワークショップデザイナー、テクニカルライター。日本が内包する不均衡の壁を発掘し突破していきたい。
OTDワークショップとは?(開発者の思いとワークショップの基本構成)
OTDワークショップは、「私たちが公平だと信じている環境は、実は様々な不公平な前提の上に成り立っている。」という考え方をベースに多様性と公平性について考えるために東京大学で実施した授業を、企業や行政などの組織向けにアレンジして生まれました。
「共生社会」や「心のバリアフリー」という言葉が広がり、ダイバーシティに関心を持つ企業も増えていますが、その出発点として、今の社会のあらゆるところに偏りや不公平が潜んでいることに気づくことの重要性はいまだ十分に認識されてはいません。
学問の世界で生み出された知見を、ビジネス組織をはじめとする社会の現場に還元していくことで、これまであたりまえだと感じてきた「偏った」視点を捉えなおし、新しい価値や発想を生み出す機会をつくっていきたいと考えています。
<ワークショップの基本構成>

OTD HPより
「ダイバーシティ」から連想されること

ワークショップの様子
ワークショップのキーワード「不均衡」って何だろう?
「無意識の特権」をもつ多数派であることを多数派自身が自覚することなしには、少数派の視点を取り入れた社会づくりは、どこまでいっても少数派をのけ者(関わることのない存在)にすることになってしまいます。少数派の視点でしか気づきにくい組織や社会の歪みを意識的に学び、修正していくプロセスの重要性に気づかされます。

勝負の行方はホワイトボードに記入していきます。ここでは戦略が大切です。
ワークショップのキーワード「障害の社会モデル」って何だろう?
「個人モデル」は原因を個人の側にあると考えるので、多数派と少数派は交わることがありませんが、「社会モデル」では多数派によって作られている社会自体のありかたを変えていくためには少数派の視点を取り入れることが重要になります。
社会モデルの考え方はもともとは障害の原因を理解するものでしたが、障害者を含む様々な少数派の 抱える課題を考える時にも同じように使えると思います。

私たちが今、気づくべきこと、行うべきこと
多数派と少数派の「不均衡」な状態は、経済的な有利不利だけでなく、生活環境、教育環境、情報環境のみならず、人間関係の豊かさを含む心理的な安定感にまで影響を及ぼします。
そして多数派と少数派は二分されるわけではなく、人はその時々で多数派になったり、少数派になったりすることもあります。
また、少数派の見方を取り入れることでこれまでとは異なる価値に気づくきっかけになるとして、企業活動を活性化することができるでしょうか。一人ひとりのマインドを変えることと並行して、少数派の困難への感受性を育てる組織風土に変えていく道筋は作れないでしょうか。
多くの企業が企業理念やパーパスに多様性の受容や共生社会の実現への貢献を謳っていると思いますが、そのためにも、企業内で、多様な人が活躍する風土や土壌を作ることが必要です。
持続的な成長と企業の社会的責任を果たすためにも大事な考え方だと思います。
この「不均衡」に対して、国も人権・共生社会に向けた法律「障害者差別解消法」を改正し、2024年4月1日から、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました。その他にも、「LGBT理解増進法」、「育児・介護休業法」、「女性活躍推進法」、「障害者雇用促進法」など様々な不均衡を是正する法整備が進んでいます。
コンプライアンス実現のためにも、企業として取り組まなくてはいけないという背景もあります。
「障害者差別解消法」でいう「障害者」とは、障害者手帳を持っている人だけではありません。身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害や高次脳機能障害のある人も含まれます。)、そのほか心や体のはたらきに障害のある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、継続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受けている全ての人が対象となります。
この法律では、行政機関や事業者に対して、障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、「合理的配慮の提供」として、障害のある人にとっての社会的なバリアについて、個々の場面で障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることとされています。
私たちの所属企業も「合理的配慮の提供」に取り組む義務がありますので、まずは社員教育の一環としてOTDワークショップを開催してみることはアクションの一つになるのではないでしょうか。
■参加者の感想
・ひとりひとりの気持ちの持ち方で社会は変わっていくのではないかと思える気づきがありました。
・チームの中で、1990年に行ったアメリカの町はすでに出来るだけフラットに作ってあって、車いすの人が町に出てもなるべく困らないようになっていたと教えてくれた人がいました。それから35年もたった日本は少しもその町に近づいていないと言っていました。段差を無くすことだけが解決策ではありませんが、せめて、マイノリティと言われる人々を受け入れる気持ちを持っていたいと思います。
・ゲームからのインクルーシブ、ダイバーシティへの考え方の結びつきがとても納得できる形だった。楽しく学べた。
・特に仕事ではどうしてもマジョリティがターゲットになりますが、そこに少数派を受け入れる手立てや余裕を残すことで、より良い提案に繋がる気がしています。
・社会モデルで考えることを意識して行きたいと思います。
・社会の中でどのようなことが起きているのかというものが体感できる2.5時間だった。
・グループワークで短時間ながら各々の意見を交換できた事が良かったです。個々人のカラーも浮き彫りになりました。
・誰でもマジョリティとマイノリティの要素がある。マジョリティの要素が多すぎると他者への配慮がなくなってしまう。そのことを日頃から忘れないようにしたい。
ワークショップを終えて
SDGsの「誰一人取り残さない社会を実現する」という目標がありますが、そのためには、多数派にとって有利な社会の仕組を見直し、少数派にとっても生きやすい社会を作っていく必要があります。企業の中でも、多様な人が活躍する風土や土壌を作るために、少数派がおかれる状況を理解し、意見を聞く場を作り、誰にとっても有効な仕組やルールを築くことがきっと出来るはずです。

参加者の皆様
OTDワークショップの問合せ先
一般社団法人OTD普及協会
https://otd0507.org/
問い合わせメール:info@otd0507.org
インクルーシブ・キッズデザインプロジェクト
<参加企業・団体>
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ、株式会社フレーベル館、株式会社LIXIL住宅研究所、東京大学大学院、キッズデザイン協議会
