2024.3.22

経営者による意見交換会【事例紹介】 第17回キッズデザイン賞 内閣総理大臣賞「こども選挙」

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【事例紹介1】
第17回キッズデザイン賞 内閣総理大臣賞「こども選挙」
こども選挙事務局 池田一彦氏

■こどもの、こどもによる、こどものための選挙

2022年10月30日、神奈川県茅ヶ崎市でこども選挙が実施されました。
この日は3名が立候補した茅ヶ崎市長選挙でした。「こどもが聞いて、選んで、届ける」プログラムとして企画されたこども選挙は、対象の小学校1年生〜17歳が投票、566票が集まりました。

募集で集まった15名の子ども選挙委員が中心となって、候補者への質問とインタビュー動画を作成し、ウェブ上に公開しました。
質問は、複数回のワークショップを経て子どもたちが自ら考えたものです。


選挙当日は、市内11ヶ所にこども選挙専用の投票所を開設。実際の選挙管理委員会と連携して本物の投票箱が使われ、ネット投票システムも構築されました。
開票作業も子どもたちが行ないました。
(投票する様子、開票する様子の画像)

池田氏はこども選挙開催の意義をこう語ります。
「本当の選挙と同時開催の模擬選挙による主権者教育の実現をミッションに、リアルな学びと市政への参加機会の実現にこだわりました」
「こども基本法に明記されている、意見を表明する機会や多様な社会活動に参画する機会の確保の一助になればという想いがあります」
また、359名が投票した理由や期待することをメッセージ用紙に記入してくれたと明かし、「一人一人、真剣に書いてくれていて、僕ら実行委員会も驚きました」と振り返ります。
この子どもたちの貴重な声は、すべての候補者に届けられました。


■大きな成果

当初のミッション達成とともに、子どもたちに「茅ヶ崎という自分のまちを良くしたい」というシチズンシップが生まれたようです。
同時に、大人にも大きな変化が見られたと言います。
それは、大人にも分かりやすい選挙メディアだったと市内で評判になったこと、こども選挙のボランティア2名が市議会議員選挙に出馬し見事当選したこと、保護者から勉強になったという声が寄せられたこと。

子どもが真剣にまちのこと、選挙のことを考える姿を間近に見て、まちの課題に触れていく中で、大人が「主権者教育」されたというのです。

「ちがさきこども選挙」は全国へ広がり、半年後には「さいたまこども選挙」「とっとりこども選挙」「さぬきこども選挙」が実施されました。神奈川県の海老名市、藤沢市、長崎県の壱岐市や愛媛県の新居浜市でも実施される予定だそうです

■茅ヶ崎から全国へ

Facebook上に「全国こども選挙実行委員会」というコミュニティを作りました。方針は3点。

1 オープンソース 共有し合おう
2 自立分散型チーム 主体的に発展しよう
3 相互扶助ネットワーク 助け合おう

茅ヶ崎の制作物や投票システム等、全てオープンソースにしました。開催は各地の実行委員会が主体となり責任を持つ、困り事があればコミュニティで相談しアドバイスを送るなど助け合います。各地の制作物やノウハウを相互にシェアすることで、こども選挙はどんどん進化することでしょう。
池田氏は「NPO法人でも何でもありません。実態はなくても、価値観の共有が重要です」と言います。

■偏見との闘い

池田氏は「実は、こども選挙は『偏見』との闘いでした」と振り返ります。
「選挙と政治のタブー」「子どもの力を信じない大人の偏見」といったもので、さまざまな言葉が投げかけられたと言いますが、「キッズデザイン賞 内閣総理大臣賞」でこの活動が社会的に承認されたと声が弾みます。
「政治や子どもへの偏見が根深い日本社会において、すごく意義のあることだったと思っています」

■こどもがまちの未来を変えていく

こども選挙という活動を通じて想像以上の学びを得たといい、シェアしてくれました。

まず、「子どもは壁を作らなければ、どこまでも行ける」ということ。
子どもの手による選挙で、選挙後の子どもたちの成長は目を見張るものがあったそうです。


そして子どもとの距離感。当初、「子どもの」主権者教育や「子どものための」選挙を作ろうしていたものが、途中で「子どもと一緒に」となり、そのうちに「子どもが」自ら自由に動き出した ―― といいます。校長先生に直談判してこども選挙のポスター掲示の許可をとってきたというのです。


さらに、大人の役割。
子どもを信じて任せることの大切さに気付いたと振り返ります。しかし、土台となる「こども選挙」の企画がなければ子どもは動きません。大人は、子どもが動ける舞台をデザインすることが一番重要だと強調しました。
キッズデザイン賞マーク